5年ほど前から現代は変動(Volatility)、不確実(Uncertainty)、複雑(Complexity)、曖昧(Ambiguity)が急速に増して予測困難な時代になったと言われ、この4要素の頭文字をとりVUCAと表されるようになった。
それがここに来て、新型コロナウイルスが世界的に広がり、人々の意識と生活様式を一変させ、さらに混沌として先行きがまったく分からない状況に追いやった。VUCA対策の準備をする前に霧のなかへ迷い込んでしまった印象だ。
そんななか今年のものづくり白書の大テーマは「企業変革力(ダイナミック・ケイパビリティ)」だった。
変化が激しく、先行きも見通せない時代、ものづくり企業はその時どきの状況に応じて自らの形を変えて対応していくことが重要である。それを実行する力こそがダイナミック・ケイパビリティであり、それを身につけて強化するためにはデジタル技術を取り入れていくことが必要になるとしている。
また日本電機工業会(JEMA)が公表した「製造業2030」でも、これからはさまざまなビジネスや生産方式を柔軟に組み合わせていくことが大事で、その仕組みとしてFBMを提唱している。
乱暴な言い方をすれば、これから先の未来は分からないし、変化するのは当たり前。だから何が起きても都度対応できるように柔軟性を高めておきなさい。そのためには、特定の人やものに依存した仕事や業務は減らし、誰でもいつでもできるような準備を整えておくことが肝要だということを示している。
クルマの教習所では「だろう運転」ではなく「かもしれない運転」をしなさいと教えられる。運転中は、何かが飛び出してくるかもしれない、信号が変わるかもしれないと常に注意しておき、とっさの時にはすぐにブレーキを踏める、またはハンドルを切れる状態にしておく。そうすれば事故を防ぐことができるというものだ。
製造業も同じ。先行きが分からないからこそ「かもしれない」と準備をし、いざという時には変化ができることが大切だ。
しかし、いざ変化が必要な時に「旗振れど踊らず、強制的に踊らす」では意味がない。会社と社員全員が「変化を当たり前」と受け入れる土壌はできているか? その共通認識を持つことからはじめよう。