インテリジェンス化 ゲートウェイに「知能」持たせる
ITとFA(OT)のネットワークを融合してデータ流通を円滑にするのが、製造業のデジタルトランスフォーメーションやスマートファクトリー、デジタル化への第一歩。しかしFAとITの間には微妙な違いが多く、そのすり合わせの手間と面倒さがハードルとなっている。
モノトークス(川崎市多摩区)は、ITとFAの中間に設置されるゲートウェイに知能を持たせた「NEXTgateway」を開発。IT FA間のギャップを埋め、効率的にデータ活用ができる環境構築を実現する。
手間かかるすり合わせ
これまでIoTでエッジデバイスからデータを吸い上げ、クラウドやサーバーにアップして処理を行う際、フィールドから集めたデータの形式と、IT側で処理できるデータ形式が異なるため、両者をすり合わせる必要があった。その場合、生産技術など工場の現場部門がIT側の要求に合わせることがほとんどで、現場部門にとっては追加の作業が発生していた。そのため現場とIT部門の連携は難しく、それがIoTがなかなか進まない原因にもなっていた。
それに対し同社は、現場部門の手間と工数がかかっていた作業を代行できる知能化ゲートウェイ「NEXTgateway」を開発。ITとFA両方の工数を削減し、データ活用に集中できる現場づくりを実現した。
同製品は、右から左へデータを流すだけの従来型のゲートウェイとは異なり、プログラムを組み込んでインテリジェント化し、計算や変換、再構築など各種データ処理が可能になっている。プログラムはGUIを使って画面上でファンクションブロックを線でつなげるだけの直感的な操作で作成でき、プログラムの知識がなくても簡単に作ることができる。ファンクションブロックはすでに40種類以上が用意されており、必要な機能を組み合わせて使うことができる。
通常はエッジ機器からデータを収集する際、データ通信のためにPLCなどのプログラムを書き換える必要があるが、エッジ機器の内部の変更の手間を減らし、データ収集することが可能となる。
集めたデータは、ゲートウェイ内でサーバーやクラウドで処理しやすいデータへと再定義が可能。AI等で使うデータを簡単に上位に上げられるようになり、FAからITまでの円滑なデータ活用を可能にしている。
また、ゲートウェイはエッジ機器から多くの情報が集まっていることから、WEBサーバーを使って蓄積したデータを整理して可視化することもできる。ダッシュボード機能として稼働率や生産数などを表示し、デジタルアンドンとしても利用可能となっている。
フエニックスの技術をベースに
同製品のベースとなっているのが、フエニックス・コンタクトの「PLCnextTechnology」。FAや産業向けに作った制御プログラムを、webサーバー内蔵のPLCnextコントローラに組み込むことで高信頼性の産業向けアプリケーションやITと融合するソリューション提供を可能にするプラットフォームで、同社はこの仕組みを使うことでインテリジェントなゲートウェイを開発した。
アプリケーションやソリューションは「PLCnextStore」と呼ばれるグローバルなマーケットプレイスで有料・無料で公開できる。同社はアジア・日本初のコントリビューターとして、NEXTgateway用のファンクションブロックを開発し、6月5日に初めてのアプリ(無償版)をマーケットプレイス上に公開した。今後有償アプリも順次開発・販売していく予定だ。
事前提案の評価は上々
現在、主要な産業ネットワークに対応済み。エッジ機器側は、SLMP、Modbus/TCP、RS232/422/485、TCP/IP、デジタル/リレーアナロク入力、サーバー側はOPC/UA、EtherNet/IP、Profinetに対応している。今後はフィールドネットワークとしてCC-Link IE Field Basic、EtherCAT、ITプロトコルとしてMQTT、MT Connect、サーバー側もFIELDsystem、AWSへの対応を予定している。
発売して間もないが、すでに一部の業界や企業で事前に提案を行っており、評価は上々。特にIoT化やデジタル化が未対応のレガシーな機械や製造装置を使っているメーカーや、1個あたりの単価が安く、大量生産で装置稼働率が重要な指標となる食品業界などでは好感触を得ている。
最近はエッジ領域でのデータ処理が注目されているが、それはあくまで機械や装置単体の稼働率を管理するもの。より大量のビッグデータを扱い、トレンドの傾向分析などはIT側で行うものであり、結局のところFAとITのどちらかではなく、その両方でデータ処理機能は必要となる。そこではFAとITでデータ形式のすり合わせは不可欠であり、同製品はそれを自動化し、データ活用に道をひらく。