この1~2年でデジタル化の文脈で「デジタルトランスフォーメーション(DX)」という言葉が使われるようになり、さまざまな場所で目にするようになった。
5年前ならインダストリー4.0、第4次産業革命、IoT、デジタル化、製造業のサービス化などと言っていたものが、最近はDXの方が目立ってきている。
情報発信と拡散力の強いITやコンサルティング業界のビジネス領域であることも大きく影響しているが、とは言え、いまだバズワードの域を出ていない印象だ。
あらためてDXを考える。DXの解釈と定義はいろいろあるが、IT専門会社のIDC Japanでは「企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネス・モデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること」としている。
つまりはITやデジタル技術を活用して自社の企業文化やビジネスモデルに変革を起こし、競争社会を生き残っていくこととその手段のことだ。もっと言えば、作って売って稼げた時代は終わり、作り方、売り方、稼ぎ方を変えなければ競争に負けて廃業やむ無しの時代になっている。
経営者はもちろん、現場で各業務に携わる人もその意識を共有し、業務を改善または根本から変えていかなければならなくなる。その時に競争相手が使うツール、自分も持って戦わなければいけないツールが「デジタル技術」だ。システムを入れれば済む話ではない。新しい仕組みを使いこなしてナンボであり、現場の理解が特に重要となる。
トランスフォーメーションのもととなるtransformという単語は、日本語では「変わる・変える」の意味でchangeと同じだ。しかしtransformは「劇的に変わる」というニュアンスがあり、「一変、変貌、変質、変態」などの表現に近く、汎用的に使われる「変化」よりも変わる度合いが強い。
刀VS鉄砲、竹槍VS戦闘機。勝敗は明白だ。戦術を考え武器を与えるのは経営者、武器を使うのは兵隊。それぞれが役割を果たしてこそ初めて勝利を手にすることができる。