中国工場における従業員の定着及び従業員教育の進め方③
求める役割明確にし育成を
第3回の今回は、管理者の育成についてです。ここで言う管理者とは、現場の班長・組長や科長のことを指します。班長・組長や科長の育成については、連載16・17の記事で記していますので、ここでは要点をおさらいします。
4.管理者の育成
(1)最も定着してほしいのは現場の班長・組長
班長・組長は現場を指揮管理しているという観点から、工場の品質を左右するキーパーソンといえます。自社製品のQCDレベルは、班長・組長のレベルによって決まるというのがわたしの持論です。
それだけに、班長・組長が定着していれば、多少作業者の定着が悪くても何とかなるケースもあります。しかし、班長・組長の定着が悪く常に入れ替わっているようでは、品質を安定させることは不可能と言わざるを得ません。ですから、この人たちをいかに定着させるかを会社として考える必要があります。
ただし、この人たちも万能ではありません。班長・組長に抜擢されるくらいですからそれなりに優秀な人たちであることは間違いありませんが、教育を受けた以上のことはできません。どういうことかと言うと、教育を受けた内容の仕事はできるが、受けていない内容の仕事はできないということです。つまり、教育を受けていないことを自分で勉強して実践することはないのです。中にはできる人もいますが、そのような人は極少数です。
要するに、この人たちのできる仕事の範囲は、教育を受けた範囲だということです。ですから、会社としてこの人たちにやってほしい、管理してほしいことがあれば、それをできるように教育をしなければいけないということです。
この班長・組長教育も、仕組みを作れば中国人に任せることは可能です。
(2)科長にはさらなる役割がある
現場の科長には、班長・組長とはまた違った多くの重要な役割があります。現場の日常管理を任せることになるわけで、日々の生産が問題なく行われること、何か問題や異常が発生したときの対処など生産品の品質確保という重要な役目を持っています。
生産品の品質確保と言う面では、継続的な改善を進める担い手としての役割もあります。生産や工程の問題点は、常に現場にいるスタッフ、現場のことがよくわかっているスタッフが一番よくわかっているはずです。これらスタッフに改善を進める意識や力がないと改善はできません。
現場の管理の他にも作業者や班長・組長への教育係としての役割も担ってもらわなくてはなりません。人に教えるためには、まず本人が理解していることが必要です。
現場の科長にこれら役割を担ってもらうことが工場のレベルアップにつながりますし、そうした科長の中から優秀な人がさらに上のポジションにつくことが現地化にもつながっていきます。
科長の教育も現地化を進めたいのですが、正直なかなか難しいと言えます。必要に応じて日本人駐在員、本社または外部の力を借りて進めることも検討する必要があると思います。
※教育を行う前に、工場の各階層(作業者、班長・組長、科長)に求める役割を明確にすることが重要です。役割が明確になれば、その役割を果たすために必要な知識やスキルが明確になるので、教育でそれらを身に付けさせるようにしていくのです
この連載も今回で最後になります。ご愛読ありがとうございました。
★オンライン「外観目視検査セミナー」開催
ライブ配信:2020年8月27日(木)13:00〜17:30
アーカイブ配信:2020年9月30日まで、お好きな時に受講可能!
「精度向上に向けた外観目視検査の上手な進め方と具体的実施手順」
〜外観品質を保証する・バラツキ低減・精度向上のための基礎講座〜
基準の設定、限度見本、検査員の能力を最大限に発揮させる検査環境、検査員の育成・教育、検査精度維持のための定期認定、海外工場で実施するときのポイントについて解説。
詳細は、KPIマネジメント(株)または下記URLから
http://www.prestoimprove.com/seminar20200827.html
◆根本 隆吉
KPIマネジメント代表・チーフコンサルタント。電機系メーカーにて技術部門、資材部門を経て香港・中国に駐在。現地においては、購入部材の品質管理責任者として購入部材仕入先品質指導および品質改善指導。延べ100社に及ぶ仕入先工場の品質改善指導に奔走。著書に「こうすれば失敗しない!中国工場の品質改善〈虎の巻〉」(日刊工業新聞社)など。