次世代自動車 デジタル化需要、大企業では好材料も
国内製造業の設備投資の動向は? 2019年度は、大企業は1.6%の増加となったが、中小企業は10.4%減となり、設備投資に積極的な大企業と、その余裕がない中小企業の姿が明らかになった。
20年度は新型コロナウイルスの影響もあり、大企業・中小企業ともに厳しくなる見通し。ただ大企業では次世代自動車やデジタル化需要などに向けた投資は継続される見通しとなっている。
大企業の国内設備投資の状況
日本政策投資銀行が行った、資本金10億円以上の大企業を対象とした「全国設備投資計画調査(大企業)」によると、19年度の製造業大企業の国内設備投資は、当初計画では13.5%増だったが、最終的に1.6%増で落ち着いた。米中貿易摩擦などによる需要低迷があり、輸送用機械や電気機械を中心に計画から下振れした。
20年度計画では、製造業全体では8.1%増を見込む。新型コロナウイルスの影響で短期的には輸送用機械が低い伸びになるが、中長期的視点から自動車の次世代技術開発が化学(10.7%増)や非鉄金属(33.6%増)、電気機械(7.1%増)など関連業界で継続する。
また新型コロナウイルスを受けて、医療品への投資やデジタル化需要を見据えた電子材料への投資も増加すると見られている。
中小企業の国内設備投資の状況
日本政策金融公庫が行った「中小製造業設備投資動向調査」によると、19年度の中小製造業の国内設備投資額は前年度比で10.4%減少の2兆4710億円。20年度計画は19年度実績比で17.5%減の2兆391億円になる見通しだ。
業界別の設備投資動向では、19年度は前年に比べて17業種中12業種で減少した。プラスとなったのは業務用機械(9.7%増)、電気機器(4.2%増)、窯業・土石(21.9%増)、パルプ・紙(1.5%増)とその他。設備投資額が大きな生産用機械は21.1%減、輸送用機械は10.9%減、食料品は5.5%減、化学が19.6%減、プラスチックが21.4%減となった。
20年度計画はさらに厳しい状況。全17業種のうち化学の10.8%増、パルプ・紙の0.8%増以外は軒並み19年度を下回る計画。金属製品は26.0%減、生産用機械は16.9%減、輸送用機械は33.1%減、食料品は9.1%減、プラスチックが24.0%減となる計画。
設備投資の目的「維持・補修」
何を目的に設備投資をするかについては、大企業・中小企業ともに「維持・補修」が大多数を占めた。
大企業では「維持・補修」が25.9%が最も多く、「新製品・製品高度化」の17.6%も高水準を維持している。一方で「能力増強」(24.6%)は2年連続の低下となった。国内主要生産拠点の現況については、「維持や保守が行き届き、生産能力も充足している」と回答した企業が33.3%、「老朽拠点の整理縮小が必要」が10.6%と増加。
中小企業でも19年度は「更新、維持・補修」を目的とした企業が35.1%と最も高く、20年度計画でも37.1%となった。「新製品の生産、新規事業への進出、研究開発」(14.9%)などの割合が上昇し、「能力拡充」や「省力化・合理化」などの割合が低下。大企業、中小企業ともに量より質を高めようとの意識があるようだ。