■急所4
動作経済の四原則その② 両手
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両手を同時に使う
今回は動作経済の四原則「①距離を短くする」「②両手を同時に使う」「③動作の数を減らす」「④楽にする」のその②「両手を同時に使う」についてお話しします。
ピンボードという器材をご存知でしょうか? スピードレーティングを練習するための道具で、このボードにある30の穴に30本のピンを挿す作業をしている人の動作を観察して、その人のスピードのレベルを平均的な100とか、競争力がありかつ持続可能な125とかのレベルに格付けするのです。
今回はこのピンボードを使って動作経済の4原則の説明をします。最初に何の説明もしないでこの作業をやってもらうと、半分くらいの人は左手でピンをたくさん掴んで、それを右手で一本ずつ取って挿すというやり方をします。
このやり方は両手を同時に使っていると思われがちですが、実は動作経済の4原則からすると両手を使ったことになりません。なぜならば、この時の左手はピンを保持しているだけで単純に入れ物の役割であり、付加価値を生んでいないからということです。両手を同時に使うということは両手が同時に付加価値を生むことが必要なのです。
そこでこの場合は、それぞれの手に一本ずつピンを取って、左右対称に手を動かしてピンを挿すという動作をするのが「両手を同時に使う」ことになります。
もちろん両手で同時に付加価値をといっても、右手で〇、左手で△を同時に描くのでは品質が保てません、利き手で別々に描くべきです。あるいは1mも離れた穴に同時にピンを挿すのは遅いし疲れます、一つずつ挿しましょう。同時に動かす場合は動きが左右対称であり距離が25㎝以内であることが必要です。
もし片手のみで付加価値を付けている作業があったら、治具を作ったり道具を工夫したりして両方の手が使えるようにできたらいいですね。必ず生産性が上がります。
この考え方は手に限らず、例えば人と機械が同時に付加価値を生み出しているか、どちらかが監視作業になっていないかという見方にも応用できるでしょう。現場に行って両手同時作業ができているかをチェックして、出来るカイゼンをすぐに実行してください。
日本カイゼンプロジェクト 会長 柿内幸夫
1951年東京生まれ。(株)柿内幸夫技術士事務所 所長としてモノづくりの改善を通じて、世界中で実践している。日本経団連の研修講師も務める。経済産業省先進技術マイスター(平成29年度)、柿内幸夫技術士事務所所長 改善コンサルタント、工学博士 技術士(経営工学)、多摩大学ビジネススクール客員教授、慶應義塾大学大学院ビジネススクール(KBS)特別招聘教授(2011〜2016)、静岡大学客員教授 著書「カイゼン4.0 – スタンフォード発 企業にイノベーションを起こす」、「儲かるメーカー 改善の急所〈101項〉」、「ちょこっと改善が企業を変える:大きな変革を実現する42のヒント」など
一般社団法人日本カイゼンプロジェクト
改善の実行を通じて日本をさらに良くすることを目指し、2019年6月に設立。企業間ビジネスのマッチングから問題・課題へのソリューションの提供、新たな技術や素材への情報提供、それらの基礎となる企業間のワイワイガヤガヤなど勉強会、セミナー・ワークショップ、工場見学会、公開カイゼン指導会などを行っている。
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