ユーエイ(東大阪市)は、誰でも簡単にIoT環境の構築ができる統合型センサネットワークシステムを開発し、「ユーエイ・ツナガル・システム」として10月から提供開始する。
「ユーエイ・ツナガル・システム」は、
① データを取る 「各種IoT センサノード」
② データを集める 「IoTゲートウェイ」
③ データを活用する「可視化・分析アプリのクラウドサービス/MotionBoardクラウド連携」
IoT環境の構築に必要な、上記3つのソリューションをワンストップで提供する統合型ネットワークシステム。
IoT 製品開発の背景
世界の人口は今後も増え続けることが見込まれる一方、日本では少子高齢化が進み、生産年齢人口の減少が深刻な問題になっている。2050年には日本の総人口は1億人を下回ることが予測される中、総務省の情報通信白書によると、2050年の生産年齢人口は、4,930万人(総人口に占める割合は51.8%)に減少(2020年比:66.5%)と推計されている。
製造・物流産業分野では就労人口減少による働き手不足という社会課題の解決のために業務効率化や省力化、自動化が急務となっている。あらゆるモノや情報がインターネットを通じてつながるIoT化は、ロボットやAIなどによる作業の自動化や機械学習による効率化とも連携し、特に産業用途(工場、物流)において高い需要が見込まれている。
ユーエイ・ツナガル・システムの主なソリューション分野は、スマート工場や物流施設を想定しており、『運搬機器の移動位置を知りたい』 『リアルタイムで使用状況をモニタリングしたい』 また、『使用頻度や動線を調査したい』など、運搬機器の稼働状況を把握することで、業務効率の向上を図り、ユーザーの困りごとを解決。屋内位置情報(測位)ソリューションの市場規模は、2020年度50億円、2025年度には2.4倍の120億円に成長が見込まれている(矢野経済研究所 推計)。
IoTゲートウェイについて
無線通信規格EnOceanを使った「IoTゲートウェイ」は、情報・セキュリティ機器事業を手掛ける「あいホールディングス」の子会社「ウイングレット・システム」(横浜市)へ開発委託。「IoTゲートウェイ」は、ARMプロセッサ搭載・Linux対応の組み込みCPUボード「Spiral」をベースに「EnOcean」の各種センサプロファイルをプリインストールしたもので、無線LANや有線LANを通じてインターネットに接続が可能。
また、「IoTゲートウェイ」に収集するセンサデータを可視化・分析するための上位システムは、「ウイングアーク1st」の表示アプリケーション「MotionBoardクラウド」との連携を実現している。
IoTセンサキャスターについて
ユーエイの主力製品である産業用キャスターに自己発電技術を搭載し、電池レスのセンサノードとなるIoTセンサキャスターを製品化。IoTセンサキャスターは、自転車のライトなどでも使われているダイナモ発電と同様に、電磁誘導コイルとマグネットを利用して車輪の回転によって電気をつくる。
同キャスターにはホールセンサと加速度センサを内蔵しており、各センサの計測値はEnOcean無線通信を使って「IoTゲートウェイ」へ送信。さらにそのセンシング情報は「IoTゲートウェイ」を経由し、上位システム「Motion Boardクラウド」に連携することで、キャスターの「移動距離」や「移動速度」また路面から伝わる「振動・衝撃」を可視化できる。
またオプションの「IoTブリッジ(近日発売予定)」を追加することで、BLEビーコン機能を備えたキャスターの測位を可能にするマルチホップ対応メッシュネットワークを構築可能。
Sub-GHz「サブギガ」帯について / EnOcean無線通信・Wi-SUN FAN無線通信
一般的な近距離無線通信は、Wi-FiやBluetooth、ZigBeeなどの2.4GHz帯が普及しているが、同システムの主構成となる無線通信は、Sub-GHz「サブギガ」帯(1GHzに満たない周波数帯)を使用。EnOceanの周波数は928.35MHz、また、「IoTブリッジ(中継器)」には920MHz帯無線メッシュネットワークの国際標準規格「Wi-SUN FAN」を採用している。
日本では、2012年より無線免許不要な周波数帯として、サブギガ帯が開放されており、ネットワークを簡単に構築できるためIoTの普及促進に資する無線通信としてサブギガ帯を使ったネットワークシステムを開発。EnOceanおよびWi-SUN FANの無線通信技術については、半導体メーカー「ローム」から技術サポートを受け、製品化を実現している。
電池レスのEnOceanセンサノード
ユーエイ・ツナガル・システムの特長は、IoTセンサキャスターをはじめ、各種EnOceanセンサノードに「エナジーハーベスティング」と呼ばれる自己発電技術(バッテリ不要の無線通信)を採用している点。IoT化においてはさまざまなセンサノードが活用されているが、ノードの電池交換は多くの手間をとられ、電源工事を必要とする場合のコスト負担はIoT導入の障壁とも言える課題となっている。
ユーエイ・ツナガル・システムでは、バッテリ(電池)を使わずに、自己発電する電力を使ってセンサのデータを送信することができるEnOceanセンサノードを活用し、電池不要のIoTを広めることでさらにIoT化の需要拡大を加速。新開発キャスターの場合、車輪の回転によって発生する電力は非常に小さく、また回転が発生したタイミングでしかパケットが飛ばないという制約があるものの、キャスターを使った運搬機器の動きを測るという点では必要十分な電力供給仕様となっている。
IoTセンサキャスターのほか、同システムに適用するEnOceanセンサノードとして、「温度・湿度センサ」「CO2センサ」「照度センサ」「電流センサ」「人感センサ」「在席センサ」「開閉センサ」「ON・OFFスイッチ」「制御リレー」などをラインアップ。
これら各種センサノードは、EnOceanアライアンスが制定した周波数帯域1 GHz以下のEnOcean無線規格 (ISO/IEC 14543-3-1X) に基づいており、この規格は信頼度が高く、見通しがきかない室内環境下でも約30mの通信が可能で、欧州を中心に、ビルオートメーションなどに広く活用されている。
主な用途
ユーエイ・ツナガル・システムの提案用途は、高い需要が見込まれるスマートファクトリーや物流施設のほか、商業施設や医療施設などを想定。
(提案例1) 入出庫管理 <Smart Logistics>
台車の稼働エリアを把握し、台車の稼働率の向上や、適切な運用管理が図れる。
(提案例2) 稼働管理 <Smart Factory>
カゴ車、台車でのライン投入、入出庫検知でサイクルタイムを管理、ボトルネックの可視化を簡単に行える。
(提案例3) 所在管理 <Smart Store>
店内の滞在時間や、売場到達率を把握し、レイアウトの改善、お客様が商品を見やすく、購入しやすい売り場づくりを行える。
(提案例4) リハビリ管理 <Smart Medical>
歩行器を使った歩行訓練では、1日の移動距離を蓄積し、リハビリの進捗管理を行える。
販売価格:IoTゲートウェイ 想定市場価格 15万円前後(税抜き)
販売目標:システム年間販売目標1億5000万円
発売予定日:10月20日〜 サービス提供開始予定
新製品「ユーエイ・ツナガル・システム」は、「関西 工場設備・備品展」(10/7~10/9、インテックス大阪)に出展する予定。
出典:ユーエイ「EnOcean無線通信を使った『IoTゲートウェイ』の提供を開始 新発売『ユーエイ・ツナガル・システム』」