人材不足、経営戦略に課題
国によるデジタル庁の創設計画など、国を挙げたデジタル化の動き、DX(デジタルトランスフォーメーション)の波が到来しつつある。
産業界では5年以上前からデジタル化の必要性が叫ばれ、随時導入が進められてきたが、今回は国主導ということで期待は大きい。
すでに始まっている企業のデジタル化、DXはどこまで進んでいるのか? 日本能率協会が明らかにした。
大企業は着手広がる 中堅中小も関心高い
日本能率協会が全国主要企業の約5000社を対象に行った「DXの取組状況」調査によると、すでに5割以上の企業がDX推進・検討に着手済みで、4割が担当役員・部署を設けている。DXの目的は業務プロセス効率化が最も多く、推進のためには人材不足が課題となっているとしている。
DXの取り組み状況は、「すでに始めている」「検討を進めている」がともに28%となり、推進・検討をしている企業が5割を超えている。
特に従業員数が3000人以上の大企業では、すでに始めている企業が51%、検討を進めている企業が32%あり、合計で8割以上に達している。
従業員数300人以上3000人未満の中堅企業では推進・検討に着手済みが56%、中小企業では34%となっているが、検討意向を示している企業が中堅企業で35%、中小企業で43%あり、中堅・中小企業でもDXへの関心は高くなっている。
すでに取り組んでいる企業ではDX担当役員や部署を設けた企業が4割に達している。役員では専任が7%、兼任が32%、部署では専任が24%、兼務が15%となっている。
このほか、組織横断的なプロジェクトチームや、IT部門や経営企画部に担当者を置くなど、専任部署はないが担当者がいる割合も4割に達している。しかし中堅・中小企業では担当部署や担当者を置いていない企業が2割あった。
プロセス効率化重視「非連続の変革」は?
DX推進の目的について、最も重視されているのが「デジタル技術の活用による業務プロセスの効率化・生産性向上」。非常に重視しているが34%、重視しているが46%となり、8割以上の企業がプロセス効率化・生産性向上を目指している。
一方、新規事業開発や新規顧客の開拓、抜本的な事業構造の変革は、非常に重視・重視の合計が5割前後にとどまる。
DXは既存にとらわれず、非連続の変革を進めていく取り組みだが、実際はその認識は定着しておらず、業務カイゼンやデジタル技術を使った効率化という従来の連続性の取り組みにとどまっていることが分かる。
ビジョンが描けない 手探りで課題は山積
DX推進の課題については、「人材不足」が大きな課題となっている。人材不足が課題であるとしている企業が86%に達している。
また「DXに対するビジョンや経営戦略、ロードマップが明確に描けていない」が77%、「具体的な事業への展開が進まない」が76%あり、DXへの関心が高く、取り組みも広がっているが、一方では手探りで課題は山積している。
調査を行った日本能率協会KAIKA研究所・近田高志所長は、DXへの関心は高く、取り組みも広がっているが、その一方で「人材不足とともに、DXに対するビジョンや経営戦略、ロードマップが明確に描けていないという課題が浮かび上がっているが、あらためて、中長期的な視点からデジタル技術の活用、DXの推進を検討する必要があるのではないか」と指摘している。