2019年11月末にはじまった新型コロナウイルスの感染拡大も間もなく1年になる。
日本で初の感染者が見つかったのが1月半ば。クルーズ船の集団感染があったのが2月。緊急事態宣言が出されたのが4月半ばで、全面解除となったのが5月末。いまのところ国内では感染者数こそ引き続き増加傾向にあるが、爆発的な感染拡大や重篤患者や死亡者数の急増といった事態には陥っていないのは幸いだ。
また「慣れ」もあるのだろうが人心も落ち着いてきた。とはいえ、ざっと振り返るだけでも激動の1年だったことがうかがえる。
コロナ禍によって、製造業をはじめ、あらゆる産業が甚大なダメージを負った。人へのあいさつが「コロナで大変ですね。おたくはどうでした?」が定番となった。
つい1・2年前は製造業界は調子が良く、「儲かってますか?」だったのが一変した。それでも救われるのが、そんなあいさつにも「困っちゃうよねー、いつ回復してくれることやら」と自虐やユーモアを込めて言ってくれる一言だ。もしかしたら強がりや諦めかもしれないが、まだ前は向けている。苦境だがどん底ではない。
経済活動も徐々に復活し、ニューノーマルと言われる新しい活動様式、働き方も、試行錯誤ながらも定着してきた。工作機械や半導体製造装置の販売額などの各種統計を見ても、ずっと下降だったものが6月から上昇に転じている。元には戻っていないが、確実に回復している。
日本はこれまで製造業のデジタル化については、過去の成功体験、優秀な現場や人の影響力に引っ張られ、世界と比べて遅れていると言われていた。
しかしコロナ禍がそうしたしがらみを強制的に断ち切り、デジタルをやらなければいけない、変わらなければいけないという認識を植え付けた。
方向性が決まり、レールさえ敷けてしまえば日本は強い。気持ちは落ち着いてきた。経済も回復に転じた。あとは進むだけだ。