新型コロナウイルスの感染拡大と緊急事態宣言を受けて日本中に広がったテレワーク。最近は出社制限も緩和し、テレワークから通常勤務に戻っているという話も聞く。
東京商工会議所が実施したテレワークの実施状況に関するアンケートによると、現在も実施している企業は53%で、5月末から6月の前回調査から14%低下。一時期実施していたが取りやめた企業は22%に上っているという。
製造業に限ると実施中の企業は56%、取りやめた企業は20%で、製造業は他の産業に比べるとまだ積極的なことが分かる。
テレワークの実施効果について、「働き方改革(時間外業務の削減)が進んだ」が46%と最も多く、「業務プロセスの見直しができた」が39%と続いた。
回答だけ見れば「やって良かった」「今後のさらなる働き方改革に期待できる」とも思えるが、一方で、取りやめた企業の多さを見ると、コロナ禍の緊急避難的な一時対応として捉えられ、「結局もとに戻って働き方改革が尻すぼみになるのでは」という懸念も浮かぶ。「喉元すぎれば熱さ忘れる」では困ったものだ。
製造業をはじめ日本産業のこれからを考えると、DX(デジタルトランスフォーメーション)や働き方改革、生産性向上は絶対的に必要だ。一部では「コロナ禍で日本のDXが10年進んだ」という声もあり、DXの実現に向けてこの勢いは大事にしたい。
前出のアンケートでは、企業のテレワークの経験率は75%に上ったという。ドイツの政治家で「鉄血宰相」と呼ばれたビスマルクはこんな言葉を残している。「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」。
テレワークの経験を一過性のものにするか、それを糧としてDXにつなげていくかは経営者の腕の見せどころだ。