アメリカの経済動向、対米貿易は日本の製造業の行方を大きく左右する。まだ正式な結果は出ていないとは言え、アメリカの政権はトランプ氏からバイデン氏へと移る見通しで、経済政策にも大きな変化が想定される。
新エネルギー・産業技術総合開発機構技術戦略研究センター(NEDO TSC)は、バイデン次期大統領の就任でアメリカの技術イノベーションやエネルギー政策がどう変わるのかを調査し「TSCトレンド バイデン次期大統領で変わる米国の技術イノベーション・気候変動政策」としてまとめた。
先端技術に巨大投資
経済復興が柱 コロナ対策も
バイデン次期大統領の経済公約は、経済政策とコロナ対策、経済復興が柱となり、経済政策では製造業支援に7000億ドル(約74兆円)、500万人の雇用、制裁関税の見直しを行い、コロナ対策として3.4兆ドル(約360兆円)を投じるとしている。
技術イノベーション政策について、「Innovate in America(アメリカでのイノベーション)」と称して4年間で3000億ドル(約32兆円)の研究開発投資の増額を提案。対象分野は、先端材料、健康・医療、バイオテクノロジー、クリーンエネルギー、自動車、航空宇宙、人工知能、テレコミュニケーションなどで、雇用創出が期待できる国産産業を重視している。
クリーンエネに4年間で215兆円
気候変動対策に対する姿勢は、現政権とは異なり、パリ協定等への復帰、環境投資促進による国家強靭化を公約としている。具体的には「クリーンエネルギー/持続可能インフラ計画」を発表し、遅くとも2050年までに米国を経済全体でCO2排出量ゼロを目指すため、4年間で2兆ドル(約215兆円)を投入する計画。
米国製材料と製品、国内労働力を中心とする近代的なインフラの構築、電気自動車とその原材料や部品製造の世界的なリーダーへの押上、クリーンエネルギーやクリーン輸送、クリーン工業プロセス、クリーン材料などの戦略的研究分野への投資拡大、気候変動に関する省庁横断的な研究開発機関ARPA-Cの新設などを計画している。
国際協力体制で日本にもチャンス
NEDO TSCは、バイデン新政権は米国内での技術イノベーションの活発化を重視し、その保護・育成の姿勢は現政権と同様だが、貿易のルールづくりで関係国と結束する姿勢がある。またエネルギー・環境政策でも地球温暖化に野心的な目標を公表しており、地球温暖化対策をリードしているEUとスタンスが近くなる可能性があるとしている。
バイデン政権下で国際協力が加速し、高い日本の技術力への信頼と、さらなる日米協力、国際協力によって日本製造業にとっても追い風になる可能性が期待できる。