昔も今も大学入試は、受験戦争といわれるほど熾烈な猛勉強を強いられる。昔は、入学が難関な大学の卒業生は良い会社に就職できるし、出世は早いといわれていた。現在も世間一般ではそう思われているがそれほど甘い世界ではなくなった。
難関な大学を出たからといって社会の中枢に行けるとは思っていないし、卒業した大学で人生が決まってしまうものではないことを知っているのに、受験戦争に勝とうと必死になる。それは難関な大学の卒業生が、社会の中枢にいる割合が多いからである。
天才肌の人やラッキーな人は別に置いといて、難関突破したのだから世間でいうような頭の良い人かといえばそうとは限らない。それでも一ついえることがある。それは受験戦争を勝つように努力した人ということだ。
受験戦争の期間はそれまでの日常生活とは一変し、異質な非日常的生活を強いられる。この辛い非日常的生活は限定期間であるから頑張って耐えられる。難関を突破する受験生はがむしゃらに勉強するが、がむしゃらでもそれには計画性があり戦略的である。ちょっと短い時間を見つけて勉強する。どうやったら覚えやすくなるかなどの工夫をする。
スポーツ選手が目標に向かって高い練習メニューを作って挑戦しているように、1日の各科目の目標を作り、時計とにらめっこしながらその目標を達成するように必死にやる。人生の中でも一番多感な時期に夢中でやったことは、受験生の忍耐力、集中力、持続力を育む結果となっている。その上、がむしゃらに勉強しているように見えても、つたないながらも戦略性が身についているのである。
そのように非日常性の中に身を置き、がむしゃらにやれるのは限定的期間であるというほかに、限定期間の先にある夢がモチベーションになっているからである。その結果、難関を突破した人は達成感がひとしおであり、身体はそれを覚えているものだ。受験戦争の勝利者の多くは、かくの如く学科知識習得だけでなくいろいろな力が身についている。だからビジネス社会に出ても中枢の地位を築く率が高くなるのだ。
営業の分野は受験戦争とは違って限定期間の活動ではない。販売員である以上、終生、営業戦線上にいる。販売員の日常は、顧客に追われ多忙な時を過ごす。見積もり、納期対応、クレーム、調べ事、案件打ち合わせ、取り扱いメーカーからの要請で戦略商品、新商品の売り込み活動など多彩である。以上のような毎日の活動が日常的活動である。しかし販売員の使命は、持続的に売り上げを伸ばすことである。そのためには客先やマーケット開拓は必須である。
現在の販売員にとって、客先やマーケット開拓は精神的苦労の多い活動となっている。つまり過酷な受験生活と同様に、日常とかけ離れた非日常の営業活動の部類になる。これに耐えて乗り越えていくには、ずっとやり続けるのではなく、限定期間を設定する必要がある。限定期間があるから遮二無二(しゃにむに)頑張れるし、その先の結果には果実が見えるから、それを楽しみに励めるのだ。
部品機器営業の黎明期には、客先やマーケット開拓は日常的営業活動であったが、現状の販売員は前述したような日常の営業活動で満たされてきた。そのような日常的営業にどっぷりと漬かっていると、新たな客先やマーケットの開拓は精神的辛さを伴うため、非日常的活動として後回しになってしまう。
忙しい日常であるから時間ができたらやろうと思いつつ日々過ごしてしまい、結果的にやらなくなっているのだ。だからやり切るためには日常営業活動をある期間止めて、非日常営業期間を定めればいいのだ。例えば各週1日位を非日常期間と決めて日常営業を停止し、開拓に専念する作戦を立ててチーム一丸となってやるようなことである。