ラズパイ PoE UPS
身近な課題解決に一役
2021年の製造業も引き続きデジタル化やDX(デジタルトランスフォーメーション)がトレンドとなっていくのは間違いない。ロボットやAI、IoT製品・サービスが需要の中心となり、具体的には協働ロボットやAIを使った予知保全、遠隔監視、シミュレーションソフトなどに注目が集まる。
しかしその一方で、より現場に近いところでは自動化や省力化、工数削減など身近な課題解決策が求められている。
今回はデジタル化の陰に隠れているが、現場には有益で裏トレンドになりそうな技術を紹介する。
ラズパイの産業活用
1つ目は「ラズベリーパイ(RasberryPi、通称ラズパイ)」の産業活用。ラズパイは、コンピュータに必要なCPUや各種インターフェースを1枚の基板上に集約した超小型コンピュータ。シングルボードコンピュータの一種だ。
もともと2012年にイギリスのラズベリーパイ財団が世界の子供が手軽にコンピュータを触って学べる環境づくりを目指して開発され、数千円という低価格さとプログラミング教育で急速に広まった。自分でプログラミングを組んで、さまざまなものの制御を可能にすることから、子供だけでなく、技術者や電子工作を趣味にする人の間でも広がっており、自作ロボットや制御機器、IoT機器など多種多様なものが作られている。最近、愛好家の一部で「ラズパイのPLC化」として、OpenPLCやCODESYS等のソフトPLCをラズパイにインストールしてシーケンス制御をすることが流行している。
製造現場に近いエンジニアでも愛好家は多く、実際の現場でも一部で使っているという声も増えてきている。しかしラズパイはあくまでコンシューマ製品であり、安定稼働への不安や故障もある。それに対してヒルシャー「netPI」やハーティング「RevPiシリーズ」などが産業用途に合わせた産業用ラズパイをすでに製品化して販売している。ラズパイの裾野が広がり、IoTやシーケンス制御でも目が向いていることから、ラズパイの産業活用には注目だ。
通信インフラ第3の選択肢PoE
2つ目は「PoE(Power over Ethernet)」。PoEはEthernetケーブルで電力供給をする技術で、従来は電力用と通信用で2本のケーブルが必要だったが、1本で電力とデータ通信をまかなうことができる。
省配線でネットワーク構築に便利というメリットに着目されがちだが、もうひとつ大きなメリットがある。それが「制御とセンシング」だ。PoEで接続した機器は信号を送ってコントロールできるほか、電力の導通をモニタリングすることによって機器の状態把握が可能になる。
現在は小電力で動く監視カメラや照明等が主流だが、2018年にPoE++という規格が誕生し、最大90Wまで電力供給が可能になっている。PoEでコンピュータ等を動かすこともできるようになり、スマート化やデジタル化の通信インフラとして有線と無線、第3の選択肢としてのPoEにも注目だ。
信頼性向上を支えるUPS
UPS(無停電電源装置)は以前から普及している製品で目新しくないが、またここに来て再び盛り上がってきている。スマートファクトリーやDXで止まらない工場やデータ主導型の経営などが言われているが、それを真に実現するには「電力を絶え間なく届ける」ことが大前提となる。停電や瞬停は大小含めて頻繁に発生し、それによって製造装置や機械が止まり、またはデータが欠損することはよくある。停電はほんの一瞬であっても、機械の再稼働や調整の手間やデータ信頼性の低下につながり、それが積み重なることで大きなリスクや損失になる。
それを防ぐための装置としてUPSのニーズは高まっており、従来は電力や水道ガス、病院やデータセンターといった社会インフラ向けに大型が中心だったが、製造現場や生産装置、IoT機器を対象としてより小型化した製品が各社から登場してきている。特にコロナ禍で企業のBPS(事業継続計画)の取り組みが強化されている背景もあり、それを支える機器としてUPSへの注目が集まっている。