安川電機のACサーボモータの新製品「Σ–X」が発売開始された。現在の主力機種であるΣ-7の発売が2013年なので、8年ぶりとなる。高速・高精度のモーション性能のレベルアップと、デジタルデータの収集から活用の機能を付与し、まさにより高い生産性とDX、デジタル化が求められる今とこれからの時代にピッタリ合った製品という印象だ。特に興味深かったのが、ハードウェアの工夫。ハードウェアの特性をうまく活用し、性能や機能性を高めたところに心を奪われた
Σ–Xは、圧力や振動、変位、トルクといった外部センサと接続し、それらのデータとモータ本体が持つ各種制御データと時間同期して出力できるというのが特長だ。現場の機械や部品からどれだけ多くのデータを集めても、「なぜ」「どんなデータ(何)を」「いつ」「どこで」「誰が」「どのような方法で」いわゆる5W1Hのように、それが何を意味するデータなのか定義づけと整理ができていなければ、それは活用のしようがない。特に「いつ」という時間軸が重要で、データ活用の肝はそこにある。
そこをΣ-Xでは、センサを直接サーボアンプや上位のPLCに接続してソフトウェア処理で時間軸を揃えるという手法をとらず、センサハブを介してモータとセンサをケーブルで接続し、センサデータをサーボモータに取り込んだ上でサーボアンプに送り出すという形で「いつ」という時間軸を合わせられるようになっている。
データの流れはセンサ→センサハブ→モータ→サーボアンプとなって一階層増え、モータの配線も1本増えた。一見すると無駄が増えたように思えるが、そうではない。モータとセンサは装置内部の接続なので近距離で済むが、サーボアンプやPLCは制御盤内にあってケーブルを這わせる距離は長くなる。実は、一階層増えたとしても全体としては省配線になっていて、ケーブルが外に出ることが減って断線やノイズのリスクも減らせている。まさに「ハードウェア設計の妙」を感じた
▼「モノからコトへ」「ハードウェアからソフトウェアへ」「XaaS」のように、近年はソフトウェアやサービスに対する注目度が非常に高い。それが過熱して、ハードウェアを軽視したり、ソフトウェア依存が高まり、ソフトウェアが万能と見る向きも一部にはある。
しかしハードウェアとソフトウェアは表裏一体。どちらがどうということではない。今、あらゆる製品やサービスがソフトウェアの進化によって新しいレベルに達したのは間違いない。次に必要なのは、その新しい段階におけるハードウェアのあり方だ。価値観、求められる機能が変わればモノの形も変化する。ハードウェア設計の妙が楽しめる時代がやってきた。