コロナ禍が市場拡大・創出で役割 車の自動運転、物流は今後の期待分野
FAセンサの市場が急回復を見せている。半導体製造装置、電子部品実装装置向けで需要が活発になっており、ロボット関連も上向きつつある。長らく低迷していた工作機械もプラスに転じてきた。新型コロナの影響は製造業に関しては大きな影響を及ぼしておらず、むしろテレワークの普及や省人化投資を誘発している。自動車の自動運転に代表されるように、FAセンサの技術が幅広い分野に活用が進んでおり、今後の成長が続きそうだ。
日本電気制御機器工業会(NECA)の検出用スイッチの出荷額は、2019年度が1017億4300万円(18年度比86・4%)となっている。減少の大きな要因は、半導体製造装置、工作機械、ロボットといった主力市場の停滞が大きく影響した。
20年度第3四半期までの出荷実績は約730億円で、国内出荷は前年同期比でまだマイナスであるが、輸出はプラスに転じている。工作機械の受注がプラスに転じたのをはじめ、FAセンサの主要需要先であるロボット、電子部品実装機、半導体製造装置などが軒並み好調を維持している。とりわけ半導体製造装置の勢いが止まらず、過去最高の受注が継続している。車載向けの半導体の生産が間に合わず、自動車生産ラインが停止する事態にまで発展している。
製造業は新型コロナの影響を直接受けているところは少ないものの、コロナ対策として生産現場の省人化・自動化投資を意欲的に行っている。ロボットやAGV(無人搬送車)の活用、リモートでの工場監視などだ。
また、コロナ禍の「巣ごもり」需要も加わり、通信販売の利用が増加し物流業界の投資が著しい。AGV(無人搬送車)をはじめ、仕分け作業も含めた自律的な搬送システム実現に向けた取り組みが進んでいる。AGVでは、搬送軌道をフレキシブル化した自動走行でのインテリジェントセンサの技術開発進んでいる。2Dや3Dのレーザーセンサ技術の応用しながら、搬送、追跡や障害物を検知しながら実現している。今後はAI技術を活用して搬送履歴に基づいた最適な搬送経路策定や、搬送と作業を同時処理できるような開発も志向されている。
もうひとつの期待分野が、食品・医薬品・化粧品の3品業界で、安定した需要が継続しているのが特徴だ。製造ラインにおける各種認識・識別、不良品検知などの用途で、重要性を増しており、「安全」「安心」といったキーワードに即している。製品トレーサビリティ用途に加え、このところは人手不足などに対応して、ロボットを活用に向けた投資も積極的に行われていることから、今後も期待市場として注目される。
FAセンサの中でも市場の大きい光電センサは、LEDや半導体レーザを光源にした非接触センサとして、主にワーク(製品・部品)の有無確認のために用いられている。検出方式は透過型、回帰反射型、拡散反射型などがあり、年々性能が向上している。特に光ファイバー式は、先端のファイバー部のラインアップが多彩で、取り付けや用途に合わせて選定がしやすくニーズが高く、数百種もラインアップをそろえているところもあり、あらゆる用途に用いられる。
光電センサ技術を発展させた透過型デジタルセンサとしては変位センサも注目されている。帯状レーザ光で測定幅10㍉を繰り返し精度1μmの精度で測定ができる。サイズも小型のため、取り付けスペースの制約も少ない。
FAセンサがロボット向けでの用途開拓が進むなかで、測域(レンジ)センサのアプリケーションも拡大している。測域センサは、周囲の障害物などの状況を把握する。レーザ光線で対象物までの距離を測定し、270度前後の視野に対して自分を中心に平面地図のような測域情報を得ることができる。誤動作が許されないことから検出スキャン時に発するパルスの計測方法に各社独自のアルゴリズム採用をして周囲環境に干渉されないようになっている。
こうした特性により、AGV(無人搬送車)や移動ロボットなどに搭載することで、安全防護を確保しながら高精度な誘導用位置測定を可能にする。光や埃、汚れなどの悪環境下でも高信頼の検出ができる。しかも、検出フィールドの設定が自在にできることで、用途ごとのパターンに応じた稼働も可能になっている。
長距離で高感度の検出が可能なため、最近では立体駐車場や、トンネル前での車両の高さ検出など、屋外や交通分野、さらに安全分野を中心に用途が拡大している。この領域では、画像データと組み合わせて精度を向上させる取り組みもなされており、活が広がっている。
近接センサは、耐環境性に優れて、高温・多湿、水中などで使用できるという、他のセンサにはない大きな特徴がある。直径が3㍉の超小型タイプや、オールメタルタイプなどラインアップも増え、金属体、非金属体の混流ラインでも使用できる。検出距離は、数㍉~数十㍉が一般的だが、最近は長距離タイプも発売されている。
このほど近接センサで、1台に2つの出力機能を内蔵した新製品が発売された。従来の一般的な近接センサは出力が1つで、検出領域内でON/OFF出力する動作点が固定あったが、1台に2つの出力機能を内蔵することでセンサ2台分の機能を内蔵。検出領域内への検出体の移動に合わせて動作点を2点設定可能で、それぞれの出力の動作ロジック(ON/OFF)を組み合わせることで、1台で最大4エリアの検出ができる。例えば工作機械の自動工具交換では、工具の有無、取り付け位置のずれなど、正常・異常の検出を2台の近接センサで行っていたが、これを1台で対応できることになり、設置作業を効率化できる。
炭素繊維(カーボンファイバー)が検出できる電磁誘導型近接センサも注目されている。従来の電磁誘導型近接センサに比べ検出距離を長くしたもので、静電容量式近接センサや超音波センサに対しても高いコストパフォーマンスを有する。自動車産業を中心に炭素繊維の使用が進み用途が拡大しているなかで、電磁誘導センサは炭素繊維を確実に検出できないという課題があっただけに、今後の動向が注目される。
一般的な近接センサの検出距離は1~10㍉ぐらいと短く、センサが安定して検出できるための位置設定の調整作業に非常に手間がかかり、作業者によって設置のバラつきが出るという課題もあった。この作業をパソコンの専用設定ツールを使用することで、最適な動作点をオートチューニングで簡単に設定できるようにした。近接センサ本体に搭載の動作表示灯を確認しなくても、パソコンから動作状態や動作点をモニタリングすることができ、より安定した検出が可能になる。
安全対策用センサもマットスイッチ、ライトカーテンなど、接触式、非接触式など多様で用途に応じ使い分けされている。中でもセーフティレーザスキャナは、ソフトウエアで危険領域を限定でき、ロボットが使用されている工程や、無人搬送車などにも搭載されている。セーフティライトカーテンも、設計や取り付け・調整などの手間を省く改良がされ使いやすさが増している。光を用いた同期をすることで、省配線を実現、複数のセンサを使用しても干渉しない工夫がされているタイプもある。従来は誤作動による原因追求に工数がかかっていたが、LED表示や通信により、状況を知らせる機能も各社強化しており、導入後の工数も削減できる。
レベルセンサは、液面や粉体面が設定レベルになった時に信号を出力するセンサ。一般的なタンクや容器内の内容物のレベルを検出する用途が多いが、河川や湖沼の水位・水量測定、下水や排水の液面測定などにも利用されている。
最近では、災害防止の観点から設備を強化する取り組みが行われており、無線通信機能を持たせて遠隔地のデータを伝送できるタイプや、光ファイバーを用いた通信を採用し、強いノイズ環境でも使用できる製品も現れている。
さらに、自動車や二輪車などのエンジン周りや、外食産業の厨房にも採用されており、新規市場への浸透が進んでいる。レベルセンサに温度センサを内蔵し一体化することで、スペースの削減とトータルコストの低減も図られている。
超音波センサは、比較的超距離・広範囲の検出ができるのが特徴であるが、近距離での特性も向上している。また、超音波センサを複数同時使用時の音波のクロストーク対策として、自動同期機能を内蔵した製品も発売され、信頼性も高まっている。
FAセンサの通信方法としていま注目されているのがIO-Linkだ。ⅠO-Linkは拡張性に優れた通信で、いままで利用できなかったセンサ内部の情報をユーザーがアクセスでき、しかもリアルタイムでクラウドベースでも利用できることで、最適制御、予知保全などへ大きく利用領域が広がる。
センサのON-OFF情報だけでなく、状態管理、緊急判断といった場面でのAIと連携した活用も進む。IO-Link対応のセンサは各社から対応製品が発売されている。
工場の生産現場でのFAセンサは、機械や装置の故障予知やメンテナンスでも重要な役割を果たしている。生産性向上を進める上で、機械のダウンタイムの削減や不良品生産を防ぐことも重要となる。なかでも機械の振動や異音から故障を予知し、未然にトラブルを防ぐ役割もFAセンサは有している。今後もセンサがものづくりを大きく左右するキーパーツとしての重要性を増しそうだ。
FAセンサの高い信頼性と高速センシング技術はFA領域を超えた活用が期待されている。中でも自動車の自動運転やドローンはFAセンサの要素技術が凝縮された代表的な例と言える。FA用途というトラブルが許されず、常に安全側に作動する高い機能は、こうした用途では高い信頼性維持に貢献している。