会社を変えるのは立派な改善ではない。誰でも実行できる、簡単な改善やモノマネ改善こそが、会社を変える。
よくある改善の仕組みで「改善提案制度」というものがあります。仕事をやり易くしたり、経営を良くしたりすることができそうなアイデアが出た時に、それを提案する制度です。ところがこの制度があまり活発に運用されていないことが多いのです。
どうしてだろう?と思って聞いてみると、その会社の制度で評価を受けるにはとても高いハードルがあるようなのです。提案する内容が、その人が自分で考えたユニークなものであることや、実行した時の効果が金額で表れることが必要といったことです。
そうだとすると、「既に一部で実行されているすごく良い改善を、自分たちはまだ実行していなかったのでマネして実行した」ということはユニークでなくマネなので、この会社の「改善提案制度」では不採用になります。「この改善をすることで、皆が楽しくなりました」ということがあったとしても、金額効果で表せなければやはり不採用になるということです。
しかし例にあげた二つは確実に会社の経営に貢献します。やっても意味がないということではなく、意味があるからドンドン実行して会社を良くするべきだと思います。しかし会社の制度で評価されないとなると、実行される確率は下がると思います。
改善において大切なことは「実際に行われること」です。どんな簡単な改善でもいいしモノマネでもOKです。むしろモノマネを奨励して実行した人をドンドンほめてあげる仕組みにした方がいいと思っています。良いモノマネを皆が実行することができれば、あっと言う間に改善が広まり、同時に従業員全員に会社変革の役割と方向性が明確になるからです。
改善は技術などの一部の人がやるのではなく、全員でやることが重要です。全員が達成感を持つことで、現場のすべての人に居場所が生れ、その結果、会社が大きく変わるのです。改善をするからには効果が出なければ意味がないとか、改善として認められるためには独創的でなければならないなどといって、改善を難しく考えたり社員の皆さんに感じさせているとしたら、まずその考えを改善すべきでしょう。
日本カイゼンプロジェクト 会長 柿内幸夫
1951年東京生まれ。(株)柿内幸夫技術士事務所 所長としてモノづくりの改善を通じて、世界中で実践している。日本経団連の研修講師も務める。
経済産業省先進技術マイスター(平成29年度)、柿内幸夫技術士事務所 所長 改善コンサルタント、工学博士 技術士(経営工学)、多摩大学ビジネススクール客員教授、慶應義塾大学大学院ビジネススクール(KBS)特別招聘教授(2011~2016)、静岡大学客員教授
著書「カイゼン4.0 – スタンフォード発 企業にイノベーションを起こす」、「儲かるメーカー 改善の急所<101項>」、「ちょこっと改善が企業を変える:大きな変革を実現する42のヒント」など
一般社団法人日本カイゼンプロジェクト
改善の実行を通じて日本をさらに良くすることを目指し、2019年6月に設立。企業間ビジネスのマッチングから問題・課題へのソリューションの提供、新たな技術や素材への情報提供、それらの基礎となる企業間のワイワイガヤガヤなど勉強会、セミナー・ワークショップ、工場見学会、公開カイゼン指導会などを行っている。
■詳細・入会はこちら https://www.kaizenproject.jp/