若手技術者の 時間捻出 をどのようにすれば実現できるのかわからない、という悩みについて考えてみます。
時間的に追い詰められる若手技術者
若手技術者は基本的に時間的余裕がありません。これは、若手技術者はタイムマネジメントが不得意ということに加え、そもそも経験不足故、日々の業務がわからないため、推進効率が低いということが背景にあります。
そのような状況下でも若手技術者の多くは専門性至上主義に則り、できるだけ早く成果を出したいと焦る傾向にありますが、ここは焦らずに一つ一つ確実に推進してほしい、と粘り強く伝えることが肝要です。当然ながら実務を通じた経験蓄積は技術者としての知見を積み上げるために必須であり、ここで焦ったり、逆に手を抜いていると、将来的に実務能力に欠ける中年技術者という、企業にとってネガティブな存在が増えていくことになります。
技術者の育成に無関係なものの削減検討はマネジメントの使命
しかしその一方で、明らかに誰がやってもいいようなルーチンワークについては、業務時間の削減という観点から対策することがマネジメントにも求められます。
まず検討する必要があるのは、「自動化できないか」ということです。
今はこれまでのPCに加え、スマホやタブレットの浸透により、様々なアプリが登場しています。これらの中には、例えば画像認識技術を使って、手書きで行う部分を自動で入力する、といった明らかなルーチンワークを自動化するといったことを可能にするものがあります。技術者本人が好き好んで手書きで様々な書類を作成するのであれば別ですが、技術的な内容とは無関係な入力作業のようなものについて、わざわざ業務時間を割くのは非効率といえます。このようなところは積極的に自動化するなどして、若手技術者の時間捻出を検討する必要があるでしょう。
盲点となっている削減、圧縮が求められる業務
また、もう一つが「不必要な業務を削減する」というものです。残念ながら、その筆頭に挙げられるのが「打ち合わせやそれに関連する業務」です。
打ち合わせというのは、「何かを決める」という目的で行うものです。単なる情報共有、進捗が無いのに集まるといった不必要な打ち合わせは、無くすことを大前提に検討した方が良いでしょう。
また、議題や会議時間を決めていないのも良くありません。時間は有限です。どのような議題を議論して決定し、またそれぞれの議題は何時までに終わらせるのか。このようなことを事前に決めることが、マネジメントには求められることです。
また、打ち合わせに先立ち、「資料を作る」というのも可能な限り無くすことが必要です。対外的に自らの主張を理解してもらいたい場合などは、資料が必要だと思います。しかし、社内の打ち合わせで情報共有を行うだけなのに、パワーポイントでスライドを作れ、という若手技術者への指示は非効率というべきです。できる限りこの手の業務を削減し、若手技術者に対しては時間を捻出するという取り組みが、マネジメントとして必要であることはご理解ください。
圧縮削減に加え、 時間捻出 に必要なアプローチ
もう一つがアウトソースです。
若手技術者を筆頭に、中堅技術者であっても、自らがすべての技術的実務を理解することにこだわるケースがあります。当然ながら技術の細かいところまで理解していることに越したことはありません。しかし、すべての業務に対し自らが理解しないと進まないとなってしまうと、業務推進スピードが極めて低下します。世界中の研究開発スピードが非常に高まっている昨今、スピード感が今まで以上に求められているのです。
このような場合は技術の根本である原理原則はきちんと理解するにしても、実務で単純作業に近い部分は、その業務を専門とする企業にアウトソースする、という考えがあります。当然ながらアウトソースする場合は、何を、いつまでに、どうしてほしいのか、ということを的確に伝え、必要に応じた業務指示をする必要があります。このような単純作業をアウトソースすることは、裏を返すと自分がわかっていないと的確な指示が出せないので、若手技術者にとっても勉強となるのです。
もちろん研修の一環として、単純作業も一度は若手技術者がやるということは大切です。しかし、ある程度知見を積んできたら実務をやることにこだわらず、単純作業の部分はアウトソースするということも、検討の中に入れておく必要があります。
要望の高まり続ける若手技術者育成効率
若手技術者の育成効率とスピード感に対する要望は高まる一方です。しかし人の成長にはある程度の期間と、日々の業務の時間的余力というのが必要です。後者の日々の業務の時間的余力を捻出するための対策として、ルーチンワークの自動化や削減、アウトソーシングを検討してみてください。
【著者】
吉田 州一郎
(よしだ しゅういちろう)
FRP Consultant 株式会社
代表取締役社長
福井大学非常勤講師
FRP(繊維強化プラスチック)を用いた製品の技術的課題解決、該関連業界への参入を検討、ならびに該業界での事業拡大を検討する企業をサポートする技術コンサルティング企業代表。現在も国内外の研究開発最前線で先導、指示するなど、評論家ではない実践力を重視。複数の海外ジャーナルにFull paperを掲載させた高い専門性に裏付けられた技術サポートには定評がある。
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