スプリング接続式の評価がますます上昇
省力化・使い易さ求め製品開発進展
端子台、コネクタなどの配線接続機器の重要性が増している。情報化社会の「つなぐ」ニーズへの対応に加え、配線作業を「省力化」するカギを握っているからだ。電気を流す配線を機器に接続する配線接続機器は、最近は情報化社会を裏から支える役割が増している。したがって、用途も微少電流から高容量電流まで幅広い。昨今の人手不足や新型コロナ感染症などもあり、作業性を高める、あるいは省人化するニーズが求められている。つなぐ技術と省力化の2つの大きな流れの中で、配線接続機器の重要性はますます高まりそうだ。
国内の配線接続機器の市場は4500億円前後と見られ、うちコネクタが約4000億円、端子台・ソケットが400億円、ケーブルアクセサリ類が100億円ぐらいと推定される。
このうち端子台は、電子・電気機器をはじめ、社会インフラ、電力・新エネルギー関連、ビル設備向けなどを中心に安定した市場を形成している。
新型コロナの感染拡大によってテレワークやWeb会議システムの普及がこの1年で大きく進み、働く環境や仕事の進め方が激変した。これらを裏から支えているのが情報通信技術であるが、高速で同時にたくさんのネットワークをつなぎ、制御できる状況を生み出している。
いま、半導体の品不足が各方面に大きな影響を与えている。自動車が生産できない、工作機械や電子部品実装機が作れない、さらには、半導体製造装置が作れないため、半導体が増産できないといった状況が生まれている。テレワークやWeb会議を支えているパソコンや携帯電話、データーセンタのサーバーなどにも影響が及ぶ。学校のGIGAスクール投資継続、コロナ禍の巣ごもり消費でゲーム機市場が拡大するなど、いずれも配線接続機器にとっては需要が拡大につながる大きな追い風になっている。
配線接続機器のうち、端子台は小型・省スペース化に加え、配線工数の削減とDCの高耐圧化などを目指した開発が著しい。
中でも、端子台の配線作業の省力化ニーズは人 手不足も加わり益々高まっており、電子機器などの微少電流用途だけでなく、電力送配電などの高電流用途でも求められつつある。
端子台に配線接続方法は、日本で主流となっているねじ式、欧米で主流となっている圧着端子を使用しないスプリング式(ねじレス式)という大きく2つの方式がある。まだねじ式の採用が多いものの、人手不足から配線接続作業の省力化対策として、スプリング式の採用が増えている。
日本ではねじを使った丸圧着端子台(丸端)が長年使用され、定着している。特に高圧・大電流用途や振動の多い用途ではねじ式の使用が多い。接続信頼性が高いことも大きな理由だ。スプリング式はケーブルを挿し込むだけで配線作業が完了し、ネジ締め作業や締める加減も不要だ。まだ配線作業が不慣れな初心者であっても簡単に作業ができることから、熟練作業者でなくても配線技術習得に時間がかからず、懸念されていた振動での配線の緩みや経年での信頼性に対する心配も使用実績を重ねることで払拭され、採用加速への追い風になっている。
スプリング式もメーカーによって接続方法には多少違いがある。最近開発されたのが、レバー操作タイプのスプリング式。結線作業用のレバーを内蔵しており、圧着端子や専用工具が不要で、電線をむき出し指操作での電線接続ができる。レバーを上げた時はスプリングが開き、レバーを下げればスプリングは閉じる構造で、レバーの位置でスプリングの開閉状態がはっきりとわかり閉め忘れなどの作業ミスを防止でき安全性が高いという効果も見込める。
従来スプリング式は制御用や小電力用を中心に普及が進んでいたが、ここにきて電磁開閉器や配線ブレーカーに加え、操作用スイッチやスイッチグ電源など、従来はネジ式接続が使用されていた機器でもスプリング式端子台の採用が増えつつある。さらに、大電流用でのスプリング式端子台のラインアップも急速に拡充している。1500Ⅴ/300Aの高圧・高電流の動力・電源用途に対応したり、電線径200㎟という太線でもドライバーを使ってワンタッチで裸の電線接続が可能な端子台も販売されている。大電流用は、丸圧着端子台(丸端)を配線後の増し締めをするという習慣が定着しているが、スプリング式の接続信頼性への評価の高まりに加え、人手不足も重なり、徐々にこの習慣がなくなりつつある。増し締めが不要になることで、トータルコスト面もスプリング式の優位性が高くなってきており、市場に大きな変化が出始めている。
現在、日本市場ではネジ式が70%、スプリング式が30%と言われており、スプリング式の発祥である欧州市場でもスプリング式は50%前後となっており、ねじ式の使用は多い。日本でも公共建設物や送配電分野ではネジ式が多く使用されているが、法的な規制が徐々に見直される流れにあり、早晩この分野でも普及が進みそうだ。
最近は欧州を中心に、プリント基板に外部端子を使用しないで直接給電するための大電流対応コネクタの要求が高まっている。大容量の電源、インバータ、サーボアンプなどでプリント基板に直接給電することで、大幅な小型化と電力損失の低減が図れ、省エネ化につながるというものだ。コネクタの採用で電線のハーネス化による組立性やボード交換などのメンテナンス性向上が図れるという効果も見込める。
最近発売されて注目されている端子台として、配線を端子側面から挿入するプッシュイン端子台で、設置高さ方向のスペースに余裕のない場合でも配線が容易に行える。丸端などのネジ式配線接続式と方向が同じのため、ネジ式端子台からの切り替えも進めやすく、側面配線のため、ケーブルダクトまでの配線曲げも不要になるなどの利点がある。
もう一つ注目されている端子台が、配線方式にプッシュイン式を採用して配線工数と端子スペースの削減を図るとともに、取り外し可能な足を取り付けることで、縦横兼用で使用できるコネクタ端子台だ。足を外した場合は縦向きに、足を付けたままの場合は横向けにと、1台で縦向き・横向きの両方に対応可能になる。在庫を削減でき、盤の小型化にも貢献する。
ネジ式端子台で注目されているのが、筐体にアルミニウム合金を採用した製品だ。軽量化が図れるのが特徴で、本体色も白色のため、黒色の端子台との識別も容易になる。圧着端子やケーブルなどもアルミを採用することでさらなる利点が生まれる。
また、ネジ式端子台では感電などの防止用に配線カバーが装着されているが、このカバーの色は一般的に透明色が多い中でブルー色を採用したカバーが注目されている。配線作業時に床などに落とした時に色がついていることで紛失を防げるというメリットがあり、探すといった時間を無くす効果につながる。
さらにハイブリッドな製品として、ねじレス端子台とヒューズホルダーを一体化した製品も注目されている。配線作業が一挙に省力化でき、DINレールにも取り付けが容易になるなど、ヒューズホルダーの新領域開拓につながることが見込まれている。
配線接続機器ではないが、配線時や測定時などに使用する配線接続クリップも改良が進んでいる。ねじを挟む力を強くすることで、外れしづらくしたもので、挟み込む力は従来の2倍を有している。挟み込みできるねじの種類も拡充しており、大電流にも対応できる。
配線接続機器は、今後自動車向けの需要拡大が見込まれている。車載向けは、ワイヤーハーネスとして従来から一定の市場を形成しているが、今後は車の自動運転に代表される電子機器の塊としてたくさんの配線接続機器が使用されることが確実で巨大な市場が見込まれている。自動車ではEV(電気自動車)も周辺で充電スタンドやバッテリなどの市場が形成されつつある。
同時に、配線作業の省人化実現に向けて、配線作業の自動化を目指す動きも活発化している。注目されているプッシュイン式端子台は自動化しやすい構造といわれており、さらに普及が加速することが期待されている。