DXの第1ステップは標準化から

ルールや標準は、個人の自由を縛る一方、複数人や組織で物事を進める際、効率的に作用する。

個人が自分の感覚でバラバラに動いていたら認識のすり合わせや調整、最後の辻褄合わせなどムダな作業がいたるところで発生し、組織として、プロジェクトとしては成り立たずに非効率になる

こんなのは当たり前の話で、いまさら言われるまでもない。そう思っている人でも、いざ自社の業務を振り返ってみると、意外とルールや標準が整備されていなかったり、それが守られていなかったりするのではないだろうか?

制御盤DXメッセの講演で、具体的な標準化の実践例を示してくれたのは、チームクロスFAのオフィス エフエイ・コムだった。ロボットをはじめ、自社で生産設備や制御盤を作る際、「この時はこうする」「機器はこれを使う」といった明確な社内ルール、標準が明文化して整備されていて、普段はそれに則って設計・製造を行っているとのこと。

こうした社内共通の基本的なレールが敷かれていることで、個人のスキルや知見に依らず、一定品質の設備を効率的に生み出すことを可能にしている。

もちろんそのルールや標準は、熟練技術者の知見をベースとしながら、加えて会社としての全体の損益も考えて作られているので、現場のひとりよがり、経営の押しつけになることもなく、程よい感じに仕上がっている。それもあって熟練技術者が引退しても、新しい人材が入ってきても現場が回り、且つそのルールや標準があるからこそデジタルツールが生きてくる。標準化によって効率化のサイクルが回っている好例だった

DXに必要なものは何か?DXに向けて何から取り組めばいいか?と聞かれたら、私は「標準・ルールづくり」と回答する。DXに向けたシステムやサービスが賑やかだが、それらは先にシステムという枠を企業に当てはめて業務やルールをそこに合わせていくというスタイル。窮屈で、その行末はシステムに依存する。

しかしDXは各社各様。そのビジネスや製造するもの、サービス、顧客ターゲットによってもゴールも進め方も異なり、自由で柔軟なものだ。システムや基盤はアナログでも既存のままでも良い。自社なりの標準やルールを設定し、そこに合ったツールを選び、基盤を整備することが重要だ。ルールや標準は、個人の自由を縛るものである一方、こうしたい、ああなりたい、こうした方が良いという願望を実現するための最短距離を進むための手段でもあるのだ。

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