世界中の老若男女に楽しまれている玩具といえば何を思い浮かべるだろうか?プレイステーション、ニンテンドーSwitchなどいくつか思い浮かべるが、一番は「LEGO」だろう。カラフルな樹脂ブロックを組み合わせて何かを作る。決まった形はなく、自分の想像にまかせて組み上げていく。無限の組み合わせと可能性が広がり、子供の知育玩具としてだけでなく、若者の教材として、大人の趣味や娯楽としても世界中で愛されている。
LEGOは、製造業における理想的なデジタルビジネスを実現している。と言っても、すごいITシステムを導入しているとか、AIやロボットといった先進的な生産設備やツールを使っているという意味ではない。製品やビジネスがとてもシンプルで研ぎ澄まされた効率化が実現されていて、どんな時代や環境の変化にも追従して柔軟に適応できる「ダイナミックケイパビリティ」を本質的に備えている点がとても優れている。
例えば、ブロックは形と色のバリエーションこそたくさんあるが、説明書を見ないと使い方や遊び方がわからないということは決してない。老若男女、世界中のどんな人でもすぐに遊ぶことができる。新製品は完成した姿と作り方、それに必要なブロックをパッケージ化するだけなので、新たな設備投資はいらずに新製品を投入できる。また子供用、大人用で製品規格が異なるようなことはなく、共通して使うことができるので無駄が少ない。製品は、基本的にABS樹脂の射出成形品のみ。高品質と効率を維持するための技術開発や設備投資はフォーカスが絞りやすい。無駄がなく、かつ柔軟。見事だ。
産業機器とLEGOはまったくの別物だ。しかし参考になる部分は多い。例えば、LEGOブロックはある意味で、製品を究極的に標準化し、モジュール化している。それによりユーザーのマスカスタマイズの要望に応え、同時に生産コストを抑えることができている。日本では、標準化やモジュール化は手抜きと捉えられる向きがあるが決してそうではない。逆にQCDを高め、ユーザーと自社に大きなメリットをもたらす。LEGOから学べることはまだまだありそうだ。