「急がば回れ」急ぐ際は、無理に近道をするよりも、遠回りでも安全な道を行った方が、結果として早く到着するということわざだ。この語源は「もののふのやばせの船は早くとも急がばまわれ瀬田の長橋」という平安時代か室町時代の和歌に因んだもので、東海道で江戸から京都に行く時は、琵琶湖を船で渡るよりも、陸路で瀬田橋を回った方が早いというのがはじまりだそうだ。
DXで変革を進めようとしている日本の製造業。色々な事例が出てきているが、実際どんなに仕組みやツールを駆使して何かを変えたとしても、それを使う人、関わる人の心が変わらなければ、それは砂上の楼閣でしかない。DXの3ステップと言われるなかのファーストステップであるデジタ”イ”ゼーションはデジタルを使った業務改善なので問題になりにくいが、ビジネスやサービスの変化を促すデジタ”リ”ゼーション/デジタ”ライ”ゼーション、さらには企業文化からの変革を行うデジタルトランスフォーメーションでは、長年にわたって支えとなってきた考え方、常識や慣習が足かせになることがある。しかもかなり高い確率で。変革や改革の基本的な考え方は現在の否定から始まる。そこまでできるかどうかがDX成功の分かれ道となる。
日本の製造業は、開国から明治維新を経て、戦前戦後を通じて先進国である欧米各国と肩を並べるだけの成長を遂げ、最短距離を走り抜けてここまでやってきた。結果論で言えば、大成功だ。しかし今は変革が求められている。欧米と肩を並べ、最前線に立っている。これまでの大成功を踏襲するのではなく、それとは異なる道を探さなければいけない状態だ。だからこそ「急がば回れ」が重要。考え方を固定せず、別の選択肢や時には回り道をする勇気や余裕。それこそがDXに必要だ。