FAセンサの市場が好調に拡大している。一部では半導体不足の影響で計画通りの生産ができず、納期にも影響が出ている。新型コロナウイルス感染症の影響が各方面で懸念されている中で、巣ごもり需要やテレワークの増加、無人化・省人化投資の拡大などが追い風になって、製造業を中心に活況を呈している。とりわけ半導体の使用する製品や分野は大なり小なり影響を受け、生産遅れなどにつながっている。FAセンサのほとんどは何らかの半導体を使って製品をつくっており、半導体不足が玉突きのように市場にダメージを与えつつある。FAセンサの市場は工場の生産設備向けだけでなく、社会インフラや家電製品など幅広い領域に広がっており、将来的に拡大が期待できる好ポジションに位置しているが、当面は需要増に対応した増産対策が課題になりそうだ。
日本電気制御機器工業会(NECA)の検出用スイッチの出荷額は、2019年度が1017億4300万円(18年度比86・4%)であったが、20年度は1007億8100万円(19年度比99・1%)と微減となった。20年度は新型コロナの感染拡大であらゆる面の活動が停止、あるいは停滞したことにより上期の需要が低調であったことが影響した。ただ、下期だけ見ると前年度同期比2桁近い伸びになっている。とりわけ、中国市場の回復が早かったことからアジアを中心とした輸出は108・6%(438億5700万円)と19年度より増えている。中国市場は携帯電話、工作機械の生産投資に加え、新型コロナ対策のマスク増産投資が顕著に行われたことで、FAの設備需要をけん引した。
国内でもテレワークやリモート展示・商談の増加で、パソコンやデータセンター投資が活発に行われ、加えて巣ごもり需要でゲームや宅配などの利用が大きく増えた。
コロナ禍で飲食、宿泊、鉄道などは大きなダメージを受けているが、一方で半導体に絡む分野は、半導体の入手難に直面している。とりわけ深刻なのは自動車の生産と言われているが、自動車以外でも影響が出ている。今日、ほとんどの製品は何らかの半導体を使用しており、納期通り半導体が生産されないことの影響は大きい。4、5年前、ねじやベアリングの生産が間に合わず、工作機械やロボット、建物の建設が遅れたことがあった。「まさか、ねじ・釘が無くなるとは」とみんなが驚いたが、現在に半導体不足はそれ以上に深刻に捉えられている。半導体の生産は高精細でクリーンな環境が求められ、かつ材料から出来上がりまでの工程が多く、複雑であることから、生産設備の調達や、本格稼働までの時間が非常にかかることで、簡単に増産対応できないのが実状。加えて、半導体メーカーは寡占化が進んでおり、限られたメーカーしか生産できないという背景もある。
現在、心配されているのは半導体の品不足による、ダブルやトリプルといった実需以上の注文が発生することだ。顧客や商社が1個の需要に対し、各方面に発注を行うことで、2倍、3倍の注文に膨らみ、元を辿ると1個であったというケースは、過去に何度も経験している。
FAセンサも半導体をかなり使用していることから、各センサメーカーは、市場の需要、製品計画、生産計画などで、これまで以上に慎重な取り組みを進めつつある。
コロナ禍と人手不足で製造業は製造の無人化・省人化を目指した自動化を進めつつある。ロボットやAGV(無人搬送車)の活用、リモートでの工場監視などだ。
例えば、巣ごもりなどで通信販売の利用が増加し、物流業界の投資が著しい。AGVをはじめ、仕分け作業も含めた自律的な搬送システム実現に向けた取り組みが進んでいる。AGVでは、搬送軌道をフレキシブル化した自動走行でのインテリジェントセンサの技術開発進んでいる。2Dや3Dのレーザーセンサ技術の応用しながら、搬送、追跡や障害物を検知しながら実現している。今後はAI技術を活用して搬送履歴に基づいた最適な搬送経路策定や、搬送と作業を同時処理できるような開発も志向されている。
もうひとつの期待分野が、食品・医薬品・化粧品の3品業界で、安定した需要が継続しているのが特徴だ。製造ラインにおける各種認識・識別、不良品検知などの用途で、重要性を増しており、「安全」「安心」といったキーワードに即している。製品トレーサビリティ用途に加え、このところは人手不足などに対応して、ロボットを活用に向けた投資も積極的に行われていることから、今後も期待市場として注目される。
FAセンサの中でも市場の大きい光電センサは、LEDや半導体レーザを光源にした非接触センサとして、主にワーク(製品・部品)の有無確認のために用いられている。検出方式は透過型、回帰反射型、拡散反射型などがあり、年々性能が向上している。特に光ファイバー式は、先端のファイバー部のラインアップが多彩で、取り付けや用途に合わせて選定がしやすくニーズが高く、数百種もラインアップをそろえているところもあり、あらゆる用途に用いられる。
光電センサ技術を発展させた透過型デジタルセンサとしては変位センサも注目されている。帯状レーザ光で測定幅10㍉を繰り返し精度1μmの精度で測定ができる。サイズも小型のため、取り付けスペースの制約も少ない。
FAセンサがロボット向けでの用途開拓が進むなかで、測域(レンジ)センサのアプリケーションも拡大している。測域センサは、周囲の障害物などの状況を把握する。レーザ光線で対象物までの距離を測定し、270度前後の視野に対して自分を中心に平面地図のような測域情報を得ることができる。誤動作が許されないことから検出スキャン時に発するパルスの計測方法に各社独自のアルゴリズム採用をして周囲環境に干渉されないようになっている。
こうした特性により、AGV(無人搬送車)や移動ロボットなどに搭載することで、安全防護を確保しながら高精度な誘導用位置測定を可能にする。光や埃、汚れなどの悪環境下でも高信頼の検出ができる。しかも、検出フィールドの設定が自在にできることで、用途ごとのパターンに応じた稼働も可能になっている。
長距離で高感度の検出が可能なため、最近では立体駐車場や、トンネル前での車両の高さ検出など、屋外や交通分野、さらに安全分野を中心に用途が拡大している。この領域では、画像データと組み合わせて精度を向上させる取り組みもなされており、活が広がっている。
近接センサは、耐環境性に優れて、高温・多湿、水中などで使用できるという、他のセンサにはない大きな特徴がある。直径が3㍉の超小型タイプや、オールメタルタイプなどラインアップも増え、金属体、非金属体の混流ラインでも使用できる。検出距離は、数㍉~数十㍉が一般的だが、最近は長距離タイプも発売されている。
このほど近接センサで、1台に2つの出力機能を内蔵した製品もある。従来の一般的な近接センサは出力が1つで、検出領域内でON/OFF出力する動作点が固定あったが、1台に2つの出力機能を内蔵することでセンサ2台分の機能を内蔵。検出領域内への検出体の移動に合わせて動作点を2点設定可能で、それぞれの出力の動作ロジック(ON/OFF)を組み合わせることで、1台で最大4エリアの検出ができる。例えば工作機械の自動工具交換では、工具の有無、取り付け位置のずれなど、正常・異常の検出を2台の近接センサで行っていたが、これを1台で対応できることになり、設置作業を効率化できる。
一般的な近接センサの検出距離は1~10㍉ぐらいと短く、センサが安定して検出できるための位置設定の調整作業に非常に手間がかかり、作業者によって設置のバラつきが出るという課題もあった。この作業をパソコンの専用設定ツールを使用することで、最適な動作点をオートチューニングで簡単に設定できるようにした。近接センサ本体に搭載の動作表示灯を確認しなくても、パソコンから動作状態や動作点をモニタリングすることができ、より安定した検出が可能になる。
また、近接センサの設置位置調整を簡単に行えるように、ティーチング補正できる機能を内蔵した製品も発売されている。設置位置の微調整が不要で、立ち上げ時間を大幅に削減できる。
超音波センサは、比較的超距離・広範囲の検出ができるのが特徴であるが、近距離での特性も向上している。また、超音波センサを複数同時使用時の音波のクロストーク対策として、自動同期機能を内蔵した製品も発売され、信頼性も高まっている。さらに、本体に2つのマイクロコントローラーが搭載することで、接続されたセンサや自身のハードウェア、そして各コンポーネントが正しく機能しているかどうかを相互に監視。カテゴリ3PL dに準拠した人などとの衝突を回避して安全確保につながる。
安全対策用センサもマットスイッチ、ライトカーテンなど、接触式、非接触式など多様で用途に応じ使い分けされている。中でもセーフティレーザスキャナは、ソフトウエアで危険領域を限定でき、ロボットが使用されている工程や、無人搬送車などにも搭載されている。セーフティライトカーテンも、設計や取り付け・調整などの手間を省く改良がされ使いやすさが増している。光を用いた同期をすることで、省配線を実現、複数のセンサを使用しても干渉しない工夫がされているタイプもある。従来は誤作動による原因追求に工数がかかっていたが、LED表示や通信により、状況を知らせる機能も各社強化しており、導入後の工数も削減できる。
人手不足が深刻になる中で、配線作業の省力化も重要になっている。以前からセンサの配線を減らす取り組みは行われてきているが、このところさらに注目されている。それは一般的なセンサはON/OFFなど有無検出機能が主であることが多いなかで、省配線機能にセンサの見える化情報を付加するものだ。センシングレベルをモニタや、異常個所のリアルタイム通知などを可能にし、装置やセンサの予防保全にもつながる。
FAセンサの機能拡張につながるとして注目されているのがIO-Linkだ。ⅠO-Linkは拡張性に優れた通信で、いままで利用できなかったセンサ内部の情報をユーザーがアクセスでき、しかもリアルタイムでクラウドベースでも利用できることで、最適制御、予知保全などへ大きく利用領域が広がる。
センサのON-OFF情報だけでなく、状態管理、緊急判断といった場面でのAIと連携した活用も進む。IO-Link対応のセンサは各社から対応製品が発売されている。
NECAでは、21年度の検出用スイッチの出荷額を1080億円(20年度比7・1%増)と予測しており、19年度も上回る見込みだ。半導体増産に向けた投資が継続することや、工作機械、ロボット、電子部品実装機、自動車関連など、FAセンサの主要需要先分野の今後の見通しは非常に明るい。また、工場の生産現場でのFAセンサは、機械や装置の故障予知やメンテナンスでも重要な役割を果たしている。FAセンサを取り巻く環境に今のところ死角は見えない。