機器部品の販売員が顧客を訪問して普段に会っている人は資材系の人か製造現場の設備系の人である。あるいは親しくなった生産技術や設計の人である。それ以外の人に会う機会は何かの用件で顧客側から呼び出しされた場合であり、そのような機会以外に販売員が自ら積極的に会いに行くことは希になっている。販売員が売上額を上げていくには攻めの営業が必要だ。そのためには技術者とのコンタクトは欠かせない。
技術者との一日平均の面談時間は昭和の頃と比べるとかなり少なくなっている。販売員に「いつも訪問している顧客なのになぜ製造部や設計部や情報システム部の人に会いに行かないのか」と聞いてみた。彼等の返答は「アポイントが取れないから」ということであった。昭和の盛りの頃にはアポイントという言葉はあまり使われてなかったし直接訪問しても会ってくれた。インターネットがまだそんなに普及していなった平成の頃には新商品を紹介しに伺いたいと言えばアポイントは取れにくくはなっていたが、それでも商談室まで出てきてくれた。
近年では機器や部品のような中間材においても商品検索やレコメンド機能が日を追うごとに充実している。技術者はそれらのネットサービスを日常的に使用して、販売員に無理に会わなくても仕事に支障をきたすことがなくなっている。ネットサービスは販売員がやってきた新商品紹介や顧客の商品選定を自動化していることになる。アポイントが取れないと言った販売員にどの様な用件をだしに使ってアポ取りをやるのかと聞いてみた。「新商品を紹介したい」「サンプルや資料をお持ちしたい」「セミナーの案内がしたい」などの返答があった。それでアポはとれないがそれ以外にどうやってアポをとればいいのかわからないという返答であった。
確かにこのような用件では必要がせまってなければ遠まわしに断られるだろう。しかし面会を申し入れた全ての人に断られてきたわけではないはずだ。偶然にもアポイントが取れた例もあるだろう。なぜアポイントがとれたのかを考えてみることだ。販売員は失注したなどのようにうまくいかなかった理由は事こまかに述べるがなぜ受注ができているかの理由をこまかに分析することは少ない。それと同じようにアポイントが取れなかった理由は考える。「売り込まれるのが嫌なんだ」「すぐに必要でないからめんどうだ」「時間を取られるのが嫌なんだ」などと嫌がる理由を明らかにする。しかし偶然にも取れた数少ない例について深く考えることはない。
人は様々である。また人の状態や人の置かれている環境も日によって様々である。なぜうまくいったのかを上記のような観点で探ることが重要なのだ。その事を調べるのはそれほどむずかしい事ではない。普段から会っている親しい技術者だって他の販売員のアポを断ったり、OKしたりしているはずだからOKの理由を聞けばいいのだ。販売員が思っているように商材に期待してOKするよりも余裕や気分に絡む理由が多く聞かれるかもしれない。その他には偶然アポイントが取れた人との面会時にどんな話をしたかを思い返してみることだ。せっかくOKしてくれた面会時なのに用件の説明に終止しているからアポ取りに進化が見られない。
初回面会終了時に次回訪問の打診はしたのか、その時何が良くて次回OKがもらえたのか恐る恐る聞いてみることもよし、後で思い返してみて理由を見つけることもよしである。とにかくOKという成功の理由をたくさん集めて置けばアポ取りはうまくなる。