営業の仕事は、他の職種と比べると多くの情報に接して多くの業務を遂行する仕事である。その中でも営業が胸を張って活動する営業の機能は四つである。①顧客開拓や発掘をする機能。②商談テーマを見つけ出す機能。③見つけた商談テーマを受注まで持っていく機能。④受注後も関係を深めていく関係構築機能の四つである。
現在の機器部品の販売員は③の商談テーマを受注までもっていくことには長けているか他の機能は退化しているようだ。人の機能は使わなければ盲腸のように退化する。まず①の顧客の開拓や発掘する機能はなぜ使われなくなったのか。幾つかの理由はある。
その㈠は中間材でもネットサービスの充実によって勝手に販売店や商品を選定できるようになった。その㈡は販売員が開拓や発掘に用いる情報は顧客にとって目新しくなくなった。その㈢は顧客は今必要でない事にわずらわしさを感じるようになった。したがって機器部品の販売員がこれまでに経験し身につけてきた営業力では上記のような理由を持った見込客から訪問面談のアポイントは取れなくなっている。だからと言って顧客が固定してしまえばいつかは成長が止まる。だから客先を発掘するために販売員に頼らずウェブサービスの充実を計ったり、メーカーと協力して展示会やセミナーを開催して興味ある見込客を呼び込んでいる。そのため販売員の顧客開拓機能は退化した。②の商談テーマを見つけだす機能の場合は顧客からの具体的な依頼が多くなったことと関係する。しかじかの商品を探してほしい。この商品を使用したいので打合せしたい。等のことである。
この様な依頼を解決して売上を上げる営業力の育成に力を入れた。そのため商品知識の習得や技術的ソリューション営業がもてはやされるようになった。しかし現在の課題解決営業は顧客から与えられたテーマありきだ。そのため、課題解決営業は結果的にテーマ発掘する機能を退化させてしまったことになる。
現在の商談テーマ発掘機能と言えば競合商品を発見する程度のレベルから脱出しきれないのである。④の顧客との関係構築機能が退化しているのは積極的に顧客開拓をしなくなったことやテーマ発掘をしなくなったことと関係する。ウェブや展示会、セミナーで飛び込んでくる見込客は商材に興味があり、テーマが進行している。したがって商品の売込みやテーマ完結のトークで攻める。機能の説明はうまくなっても相手の感情の領域に踏み込むコミュニケーションが訓練されない。そのために商品の購入が続かなければ顧客にならないし、顧客だったら休眠客扱いになる。したがって顧客関係構築機能は販売員が果たすというよりは販売店の扱う商品によって左右される。
営業が営業たる四つの機能のうち③の商談テーマを受注までもっていく機能しかなくなり他の機能が退化してしまうなら令和の販売員の人数は少なくて済むだろう。なぜなら四つの機能の中で一番デジタル化に合っている機能は③の商談テーマを受注までもっていく機能だからだ。仕様や機能などの論理的説明や価格や納期などの比較はデジタル機器が販売員の代わりになる。したがって営業はクレーム対応要因や窓口対応要因がいれば十分なのだ。
令和時代に持続的成長をするためには時流に乗ってMA(マーケティングオートメーション)やCRA(顧客関係構築マネージメント)を試みるのもいいか資金や人材的に大きなリスクを覚悟しなければなならない。ここはやはり営業の基本に戻って①②④の機能を販売員に持ってもらうように日々の活動を訓練の場として育成すべきである。