東京オリンピックを誘致する際に使われた「おもてなし」。あれを契機に日本のサービスや細やかな心配りにあらためてスポットが当たった。
当時はインバウンド全盛で、訪日した観光客は自国では味わえないような日本のサービスを楽しみ、それが来日観光客の増加を加速させた。過剰や効率無視という指摘や懸念もあったが、それでも日本の尖った特長として喜ばれ、その後のビジネスにおけるヒントになったのも確かだ。
その一方で、日本の悪い面が出て、競争力を失ったのが携帯電話や家電だ。色々な機能を詰め込んで高機能化したが、実際には不要な機能が多かった。加えて、それらが操作性の悪さや高価格化の要因となり、安価で単機能な海外製品に市場を奪われる結果となった。今となっては作り手のエゴが先に出ていた製品が多かった印象だ。つまり同じ過剰や効率無視のサービスであっても、そこにおもてなしの感覚がなく、ズレていたのが携帯電話や家電であった。例外は、おしり洗浄機能付き便座だろう。
日本は優しい国民性で、だからこそ財布を落としても返ってくるような信じられない治安の良さを今も維持できている。これは美徳であり、強みだ。DXもSDGsもすべて根底にあるのは、人や他者へのやさしさ。今こそこのやさしさを製品やサービスにもっと入れ込んだらどうだろう。誰にでも使いやすくて便利、喜ばれることをベースに、ユニバーサルデザインを日本なりに昇華させることだ。過剰とも思える品質へのこだわりをきちんと評価されるところに向ければ、それは大きな武器になる。