富士キメラ総研の調査によると、AIを活用した分析サービス、AI環境構築のコンサルティングやシステムインテグレーション、AI用アプリケーションやプラットフォームなどをまとめた国内のAIビジネスは、2020年度に1兆円を超え、2025年度に2兆円規模へ拡大するとしている。DXの要素技術としてAIの利用が増加し、急速に拡大していると見込まれる。
AIの実証実験から本格導入へ
同社によると、2020年度のAIビジネスの国内市場は1兆1084億円で、2019年度比で15%増としている。そこからさらに大きく成長し、2025年度には1兆9357億円で現在の2倍まで拡大すると試算している。
AIが注目され始めた2016年ころは期待感で漠然と導入検討する企業があったが、2018年以降は具体的な業務課題の解消に向けて活用検討する企業が増加。2019年度には実証実験から本格導入にいたるケースも増えたことで大きく拡大した。
AI導入のファーストステップとして事務処理や問い合わせ対応など定形化業務の効率化・自動化が先行し、熟練者やベテラン社員等が担っていた業務を平準化して業務効率化するソリューション、さらにはそこで蓄積したデータを使ったビジネス高度化はこれから。
またAI利用・導入検討社に対するアンケート調査で、2019年度のAI投資予算は1億円以上~5億円未満が最も多く、1億円以上のAI投資予算を有する企業は3割以上となった。2020年度のAI投資予算は、前年度比で6割以上が増加(増加した・やや増加した)と回答。2020年度は、リモートワークの急速な普及もあってDXへの関心が高まり、デジタル技術の積極的な活用や構造改革が進み、AI投資は優先的に行われると予測。2021年度以降はAIがDXに欠かせないデジタル技術としてさらに加速していくと見られている。
製造業でも活用期待のエッジAIソリューション
ソリューションとしては、製造業の工場や現場、装置に採用され活用が期待されているのがエッジAIコンピューティング。クラウドやデータセンターなどで実行されることが多いAIの学習/推論処理機能を組み込み機器や機器(エッジ)側のサーバーで行うことで、エッジ側での処理により、リアルタイム性が高くなり、生産ラインや製造装置、産業機械はもちろん、家電やモバイル端末、車載デバイスなどの民生機器、オフィス機器、輸送関連、リテール関連など様々な機器への搭載が期待されている。また自動運転に不可欠な技術として自動車関連でも盛んに研究開発が進んでいる。
エッジAIコンピューティングの国内市場は、2020年度は177億円と見込まれ、これが2025年には565億円まで成長すると予測されている。2019年度は試作品開発のための検証だったが、2020年度は具体的な試作品開発へと進んでいる。特にFAや輸送関連などの産業分野ではAI活用に関する意欲は低下していないと同社は見ている。2021年度以降、AIが組み込まれた機器の量産化やアプリケーション開発が本格化していくと予測される。
このほかのAIソリューションでは、FAXや帳票など紙媒体の文字を読み取ってテキストデータ化するOCRを活用したソリューションも2020年度は160億円、2025年には303億円になる見通し。テキストデータ化することで他のシステムと連携することができ、業務全体の自動化に向けた技術として活用が進んでいる。
チャットボットソリューションもAIを活用して問い合わせ対応などでの採用が増加している。特にコロナ禍でWEB問い合わせが急増したこととで窓口対応が逼迫し、その軽減に向けてチャットボット市場が拡大。また顧客対応として満足度調査や商品レコメンドなど適用領域も広がっている。国内市場は2020年度は188億円、2025年には368億円が見込まれている。
また製品の需要予測ソリューションの2020年度の203億円、2025年度の304億円も見込まれている。