一つだけだと問題は見えないが、一か所に集めると問題は顕在化する。
KZ法では、みんなでひと月以内に使わないモノにカードを貼ります。これを実行すると、いろいろな見えない問題が突然に顕在化します。
例えば、それぞれの人が持っている工具や道具の中にはひと月以内に使わないモノが必ずあります。今月使わなくても、数か月に一回は使いますから、特に気にしないで自分で保管しているということはありますよね。その場所だけ見ている分には全く「問題」は見当たりません。
ところが、ひと月以内に使わないとしてカードが貼られたモノを一カ所に集めてみると、たまにしか使わない高価な工具や道具がほぼ人数分出てきたりします。使う頻度と効率を考えると工場に一つかせいぜい二つあれば十分であるモノがゴロゴロあるのです。これは「大問題」ではありませんか?もしこの状態を放っておいたら、使いもしない高価な工具が際限なく増え続けます。
そして一事が万事であるとすると、工具以外にもいろいろな不要なモノがジワジワと増えていくのです。もう既に十分にある不要なモノがこれはドンドン増えて、お金と場所が減り続けるのです。
これはKZ法を実行してすぐに使わないモノを一カ所に集めたから初めて分かることであって、これ以外の方法ではなかなか見つからないと思います。見えないモノを見るには集めてみることです。分散している現場のモノを一カ所に集めてみると、これまで見えていなかった問題が一瞬で顕在化します。
一か所に置いてある在庫は少なくても、集めてみると全体では山のようにあったということはよくあるものです。そしてそこから始まって、設計や調達、あるいは営業のやり方までの不具合が見えてくることもしばしばあります。
■著者プロフィール
柿内幸夫
1951年東京生まれ。(株)柿内幸夫技術士事務所 所長としてモノづくりの改善を通じて、世界中で実践している。日本経団連の研修講師も務める。
経済産業省先進技術マイスター(平成29年度)、柿内幸夫技術士事務所 所長 改善コンサルタント、工学博士 技術士(経営工学)、多摩大学ビジネススクール客員教授、慶應義塾大学大学院ビジネススクール(KBS)特別招聘教授(2011~2016)、静岡大学客員教授
著書「カイゼン4.0 – スタンフォード発 企業にイノベーションを起こす」、「儲かるメーカー 改善の急所<101項>」、「ちょこっと改善が企業を変える:大きな変革を実現する42のヒント」など
一般社団法人日本カイゼンプロジェクト
改善の実行を通じて日本をさらに良くすることを目指し、2019年6月に設立。企業間ビジネスのマッチングから問題・課題へのソリューションの提供、新たな技術や素材への情報提供、それらの基礎となる企業間のワイワイガヤガヤなど勉強会、セミナー・ワークショップ、工場見学会、公開カイゼン指導会などを行っている。