ビジネスがグローバルに広がり、顧客とサプライヤーは海外メーカーにも広がっている企業は多い。さらに中国をはじめとする海外企業が日本市場に数多く参入してきている。ある種、混沌とした市場環境のなか、日本企業は何を自社の強みと考えているのか?
三菱UFJリサーチコンサルティングがまとめた「平成30年度製造業基盤技術実態等調査 我が国ものづくり産業の課題と対応の方向性に関する調査報告書」では、2万5000社の製造業を対象にアンケート調査を行い、4538社から得た回答から、日本の製造業の実態を明らかにしている。
海外企業と比較した競争力やものづくりの強みを探るなか、競合相手として「強く認識している」のは中国企業が22.8%に達し、「やや意識する」も合わせると50%以上が中国企業を競合相手として見ている。反対に米国企業とドイツ企業は半数弱が「意識しない」と回答している。
海外企業と比べた時の自社の優位性では、中国企業に対しては「製品の品質」66.7%、「技術開発力」43.5%、「現場の課題発見力・問題解決力」38.7%となった。現在の強みであり今後も生かしていくべきとしているのは「ニーズ対応力」の26.6%、「品質・安全・安心」22.9%、「多品種少量生産」が14.7%、「熟練技術・ノウハウ」が11.3%となっている。その反面、今後重点的に取り組むべきとしているのは、「ロボット・自動化技術」が17.8%と最も多く、次いで「コスト対応力」17.4%、「スマート工場」9.2%と続いている。
日本企業は長い間、熟練技術者や人による顧客との密接した関係性によるカスタム品を強みとしてきた。一方、中国企業は低コストの大量生産と自動化、標準化で世界の工場の地位を作り上げた。いわば強みと取り組みは正反対に近い。日本が自動化やコストに踏み込むことは、中国企業と同じ土俵に入るということ。単なる自動化や低コストではなく、中国企業とは異なる強みを作ること、高い技術を開発する、技術を使いこなすことで勝負の軸をずらすことが重要だ。