日本の製造業は現場が強いと言われてきた。品質向上、生産性向上を目指して現場は創意工夫を発揮して日本ブランドという高品質のものをつくった。会社という組織が動くにはトップダウンとボトムアップの方法がある。現場が特に強かった昭和時代にはボトムアップ型であった。まだ粗削りな製造現場で製造に関わる人々が汗して生産力強化、品質向上を目指した時代だったからボトムアップで理想的に組織は動いた。つまり現場の強さで生じた成果を戦略の中心に組み入れる会社が圧倒的に多かったのだ。
当時の製造技術は製造部の意見を聞きながら積極的に自動化に取組んだ。その過程で販売員にも「何かいい商品はないか」「参考になる事例はないか」と積極的に聞いたし、「この様な精度のものをつくれないか」「こんな機能をつくれないか」などと積極的に依頼した。現場の熱い思いを受けて販売員は動いた。いつしか販売員は現場のことがわかるようになった。現場のことがわかれば売り込み活動にも工夫を凝らすことができた。新規見込客へアプローチする場合にも扱い商品を最初から前面に出さないで、現場の技術者と仕事上のコミュニケーションができた。
現在の製造現場では製造技術者が生産効率や品質向上を目指して改善努力をしているが複雑で高度なもの造りの現場になって、各々の専門組織が絡み合っている。そのために昭和時代のように製造現場の技術者が単独で革新的な改善ができるわけではなくなった。複雑高度なFAに加えて情報技術が現場深く入ってきている時代である。各々の組織がボトムアップで積み上げても大きな効果は上がらなくなっている。
そのために製造現場ではトップダウンで仕事をすることになっている。機器部品の購入プロセスも変わった。昭和のボトムアップ時代では現場の機器部品の購入プロセスは①現場の製造技術者が思い描く自動化が明確になる。②次に自動化のための課題を抽出する。③各々の課題解決の探索。④多くの情報を販売員から入手。⑤意見決定し打合せ⑥購入となる。現在では現場もトップダウンで動いているから購入のプロセスは①先ずは会社の方針が下される。②次に方針に基づく課題が顕在化する。③顕在課題の解決策を深索④ネットサービスや販売員から情報収集。⑤比較検討する。⑥意見決定し打合せ。⑦購入となる。両者の購入プロセスを比較してみると明らかに違う。昭和時代はボトムアップ型であり、現場の技術者が自動化を描いた。そこでどうすればいいかという課題は幾つか同時に発生した。だから販売員は現場の技術者に四六時中張り付き彼の頭の中から色々な情報を入手することができた。
現在はトップダウンであるから方針に基づいて各セクションに降りてくる。製造の現場はそれぞれの役割で多数のセクションに分かれている。各セクションの事情によって課題は平行して発生する。日頃会っている技術者が担当する課題は案件として販売員に依頼が来る。しかし付き合いの弱いセクションで発生する案件はたとえ機器部品に関係していてもなじみのある他店やネット検索して直接ベンダーに依頼することになる。機器部品に関係のある自動化需要といっても情報技術の入ってきている製造現場は機械装置の自動化だけではない。人間の脳は不確実る物事にわくわくするようになっている。昭和では次々と発生する設備の自動化にわくわくした。令和は最適化を目指し人と設備は絡んで発生する需要に出会ってわくわくするだろう。その需要に従来の営業のやり方では希にしか出合わない。