半導体製造装置メーカーのディスコは、広島県呉市の広島事業所・桑畑工場内に新棟を増築した。半導体の世界的な需要拡大を受け、従来の製造棟では生産能力がギリギリのところに来ており、新棟建築によって延べ床面積を1.3倍に拡張。主に精密加工ツールの生産に利用する。
広島事業所・桑畑工場 A棟Dゾーンを竣工 A棟の増築を完了
半導体製造装置メーカー・株式会社ディスコ(本社:東京都大田区、社長:関家一馬)は、広島事業所・桑畑工場(広島県呉市)に免震構造の新棟(A棟Dゾーン)を竣工しました。新棟は既存棟(A~Cゾーン)を増築する形で建設し、延べ床面積を約1.3倍に拡張しました。
なお、このたびのA棟Dゾーン竣工により、2010年1月にAゾーンを竣工以後、将来的な半導体・電子部品の需要増に備えた3回にわたる増築工事を完了しました。これにより有事における事業継続体制と、安定した製品供給体制のさらなる強化を実現しています。
桑畑工場新棟(A棟Dゾーン)建設の目的
AI・IoTや次世代通信規格「5G」のさらなる普及、自動運転技術の進展、新型コロナウイルスの世界的な拡大にともなう生活様式の変化などにより、中長期的な半導体・電子部品の需要拡大が見込まれます。それにともない、デバイスメーカーや半導体製造受託企業、電子部品メーカーなどによる当社精密加工装置※1および精密加工ツール※2への供給ニーズが高まり続けています。そのため、製品供給体制のさらなる強化が必要でした。また、地球温暖化の影響による気候変動や地震など災害に備えた、事業継続体制のこれまで以上の強化が求められていました。
拡張による生産体制の強化
既存棟(A棟A~Cゾーン)の生産フロアは、現在フルキャパシティに近い状態です。このたびのDゾーン竣工により桑畑工場全体の延べ床面積を従来の約1.3倍とし、主に精密加工ツールの生産エリアの拡張を図る予定です。また、生産効率向上を目的とした自動化設備の開発をさらに推進していきます。
用水の備蓄・BCM※3対応力のさらなる向上
2018年7月の西日本豪雨にともなう断水への対応をふまえ、Dゾーンでは工業用水・生活用水の備蓄を可能としました。生産用の工業用水に対しては、Dゾーン地下に貯水槽を設け、およそ1,000トンの用水を備蓄可能としました。断水時でも精密加工ツールの生産を概ね10日程度継続できる水量となります。
また、Dゾーン各所に上水や雑用水といった生活用水を合計約560トン貯水し、有事の際でも工場上階の社員寮居住者や災害復旧にあたる従業員、一時避難が必要な従業員やその家族などが10日程度生活できる水量を確保しています。生活用水の貯水槽は既存棟にも順次設置予定です。
なお、広島事業所・桑畑工場および呉工場では地下水の掘削工事を進めております。並行して、純水循環システムの技術を応用した水質調整設備の内製を進めており、事業継続と生産人員の生活維持に必要充分な水資源確保に努めています。
地震災害への備えとしては、既存棟と同様にDゾーンにおいても免震構造を採用しています。
増員計画
生産体制構築に向け引き続き、従業員を新規採用にて増員します。スムーズな入社を実現するため、単身者向けの寮をDゾーン屋上に設けました(2021年8月より入寮開始予定)。
桑畑工場A棟Dゾーン 概要
名称 | 株式会社ディスコ 広島事業所・桑畑工場 A棟Dゾーン |
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建屋構造 | 地上8F建・免震構造 |
延べ床面積 | 67,795.97 m2(既存棟A~Cゾーンは194,436.72 m2) |
投資総額 | 約140億円 |
着工 | 2019年9月2日 |
竣工 | 2021年8月6日 |
稼働開始 | 2021年12月より順次 |
桑畑工場A棟 建設完了までの流れ
1989年3月 | 用地取得 |
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1989年12月 | 桑畑工場操業開始。以降13棟の建屋を建設 |
2007年9月 | 桑畑工場A棟Aゾーン建設を決定。地上8階建てとし、BCM体制強化のため免震構造を採用 |
2008年9月 | A棟Aゾーン着工 |
2010年1月 | A棟Aゾーン竣工 |
2015年1月 | A棟Bゾーン竣工 |
2019年1月 | A棟Cゾーン竣工 |
2021年8月 | A棟Dゾーン竣工をもってA棟増築工事が完了。A棟総延べ床面積は262,232.69 m2 Aゾーン建設前の旧建屋時(2008年)と比較し約5倍へ拡張。A棟建設に関わる投資総額は約498億円 |
※1 精密加工装置:シリコンウェーハなど半導体・電子部品材料の切断・研削・研磨を行う機械
※2 精密加工ツール:精密加工装置に取り付けて切断・研削・研磨を行うツールで、頻繁に交換される消耗品
※3 BCM:Business Continuity Management=事業継続管理