會澤高圧コンクリートは、福島県浪江町に研究開発型の生産拠点となる「福島RDMセンター」を建設する。敷地面積は4万6800㎡で、研究開発棟、工場棟、エンジンドローン耐久試験棟、実証フィールド、製品ヤードで構成される。総工費は30億円で、2021年11月着工、2023年4月の操業開始を予定している。
研究開発棟では、コンクリート技術をベースに新製品や新サービス、新事業等のイノベーション創出を目指し、脱炭素・スマートマテリアル、コンクリート3Dプリンタ、水素・再生加納エネルギー、デジタルPC建築、防災支援・インフラメンテ、スマート農業・陸上養殖の6つの領域で研究を進める。
以下は會澤高圧コンクリート発表資料から
研究開発型生産拠点『福島RDMセンター』浪江町に建設へ
會澤高圧コンクリート、浪江町とイノベーション共創の立地協定締結
総工費30億円 研究棟はフルPC構造 脱炭素化へアクセル
會澤高圧コンクリート株式会社(本社苫小牧市、社長:會澤 祥弘)は、福島県双葉郡浪江町の南産業団地に、研究(Research)・開発(Development)・生産(Manufacturing)の3機能を兼ね備えた次世代中核施設『福島RDMセンター』を建設することで浪江町と合意し、8月24日午後、同施設の立地と官民協力によるイノベーション共創の推進を含む包括的な立地基本協定を締結しました。
福島第一原発事故からの復興を目指す浜通り地区を舞台に、先端テクノロジーの社会実装を進め、より高度なコンクリートマテリアル事業と持続可能社会の実現に資する産業を、地域とともに創出することを目的としています。総工費はおよそ30億円。本年11月着工、2023年4月の操業開始を予定しています。
■浪江町進出の背景
私たちは、グループの研究機関であるアイザワ技術研究所(札幌市)での研究開発(R&D)にとどまらず、MIT(マサチューセッツ工科大学)やTu Delft(デルフト工科大学)など欧米のトップ理工系大学等とのコラボレーションを通じて、伝統的な素材産業からスマートマテリアルを基盤とするイノベーション・マーケティング集団へと、事業モデルの戦略的転換を図っています。
R&Dのさらなる基盤強化と、主要な国内市場である首都圏を見据えた生産能力の増強が課題となるなか、「福島イノベーション・コースト構想」のもと、福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)や福島ロボットテストフィールド滑走路の誘致などを果敢に進めている浪江町に着目。研究→開発→生産のサイクルを自社内にとどめず、地域との密接な連携を通じて、より大きな“イノベーションの環”を形成し得る立地として浪江町が最適地であると判断いたしました。
この間、浪江町の吉田数博町長はじめ産業振興課を中心とする皆様のご指導をいただきながら、①研究開発施設と工場が一体となったRDMを南産業団地に建設する ②RDMの建設に国の補助金制度「自立・帰還支援雇用創出企業立地補助金」を最大限活用する ③浪江町と私たちの間の立地協定にイノベーション共創を盛り込む、ことなどで基本合意し、本事業を計画して参りました。
■RDMの施設概要
RDMは現在、浪江町が造成を進めている南産業団地の3区画、4区画に立地します。敷地面積は計46,800㎡で、浪江町から50年間の予定で賃借します。新設する建物の延床面積は6,400㎡。「研究開発棟」(2,211㎡)、「工場棟」(3,912㎡)、「エンジンドローン耐久試験棟」(280㎡)のほか、屋外型の「実証フィールド」と「製品ヤード」で構成します。
研究開発棟には、連続地震にも耐え得る高い靱性を持つフルPC構造を採用します。標準化されたプレキャストコンクリートの構造部材をオンサイトで連続製造し、部材を長距離移動させることなくサイト内でPC連結して建物をくみ上げる先端の建築手法で、グループの一級建築士事務所であるADAAC(本社東京)が、元請の大和ハウス工業株式会社とともに、低炭素型建築方法として実践します。
工場棟には鉄骨造(S造)を採用。30tクレーン2基、8t(5t+3t)クレーン2基、2.8tクレーン3基のほか、6000KN同時緊張機を導入したプレテンション設備を有し、建築部材を含む様々なタイプのプレキャスト製品を年間約40,000t製造できるようにします。
製品製造に使用する生コンは、私たちが世界で初めて量産化に成功したバクテリアの代謝を使った自己治癒コンクリート「Basilisk」や液化CO₂で強度増進につながるナノ結晶を生成させセメント使用量を減らす低炭素コンクリート「Carbon Cure」を標準品として採用する計画です。
■総工費の3分の2の補助金交付決定
総工費は試験設備等を含めておよそ30億円。このうち3分の2に相当する約20億円について、先に提出していた補助金交付申請が8月11日正式採択されたことから、自己資金を総投資額の3分の1の10億円に抑える形で次世代中核施設の整備を進められる運びとなりました。
(完成イメージ図)
■研究開発棟/実証フィールドの役割と主な活動領域
研究開発棟は、内外の研究者やエンジニアがコラボレーションし、私たちの戦略マテリアルである自己治癒コンクリート等の技術を活かしながら、時代が求める新たなプロダクツやビジネスモデルを創出する共創の場となります。当面は、下記6つの研究開発領域をカバーする予定です。
・脱炭素/スマートマテリアル分野
自己治癒コンクリート材料「Basilisk」の量産に使用する減圧超高速撹拌機を設置するほか、低炭素コンクリート「Carbon Cure」、廃プラの電子改質で廃プラリサイクルと脱炭素を同時に進める改質廃プラ固定化コンクリート「MiCon Technology」など、脱炭素化時代に不可欠なスマートマテリアルを総合的に研究実装し、カーボンニュートラルコンクリートの一日も早い実用化を目指します。同時に、コンクリート複合劣化促進試験装置などの実験機器類を充実させ、自己治癒コンクリートを使った浮体式洋上風力用フローターなどの開発などを進める計画です。
・コンクリート3Dプリンター分野
コンクリートの“印刷”を可能にするロボットアーム式のコンクリート3D プリンターによる連続施工方法を確立するほか、さらに自由で制約のない積層造形を追求するため、独自開発の超大型エンジンドローンを使った「空飛ぶコンクリート3Dプリンター」を実用化します。グループの産業用ドローン開発会社アラセ・アイザワ・アエロスパシアル(浜松市)がプロトタイピング中である100㌔相当の重量物を搭載して5時間以上飛べる産業用エンジンドローン「Basics」の組立や整備を行う専用ラインを設け、耐久飛行試験を行う別棟も整備します。
・水素/再生可能エネルギー分野
現行の80m級陸上風力タワーをPCパネル製の補助タワーで120mクラスに嵩上げし、発電効率をおよそ2倍に高めるハイブリッド風力タワー工法「VT」(「風の塔」を意味するラテン語のイニシャル)を海外の風力メーカーと実用化し、風況の厳しい陸上エリアでの風力事業参入に道を拓きます。
こうした風力などの再エネ利用の水電解で生成した「グリーン水素」を広く安全に使用する環境を整えれば夢の水素社会が到来します。私たちは技術提携している米Syzygy Plasmonics Inc.(ヒューストン)と組んで、水素より安全なアンモニアの状態で輸送・貯蔵し、水電解に比べて5分の1の少ないエネルギーで燃料電池クラスの水素を製造するコンテナモジュール型の光触媒水素リアクターをRDMに実装し、水素SSの新たな形を提示します。
・デジタルPC建築分野
PC建築において、設計から部材生産、物流、施工まで一貫したデジタル管理手法を、実証フィールドを舞台に実用化します。私たちが提唱するSYNCWORLD(商標)は、フィジカル世界のデジタルツインとデジタル世界のフィジカルツインが“リアルタイムで同期”することにより、人と都市、ロボット、AIが共通プラットフォームで共存できる世界。SYNCWORLD下では、製造されたPC部材も全て位置情報管理が行われ、設計との誤差の確認、工事進捗状況の確認などをMR(複合現実)や犬型ロボットなどを駆使しながら行えます。
・防災支援/インフラメンテ分野
民活が進む各種衛星データと長時間の自律航行が可能な産業用エンジンドローンを組み合わせた個人向けの河川津波防災支援アプリ「The Guardian」を、浪江町との連携協定の下に社会実装します。住民のスマホにピンポイントの水害情報を提供する一方、地震発生直後には海岸線の上空映像をドローンからスマホに放送し続け、「命を守る行動」を支援する行政サービスとして確立します。
さらに液体タイプの自己治癒材をエンジンドローンで計画的に散布し、長大なコンクリート系インフラの機械維持補修という新たなインフラメンテナンス分野を開拓し、インフラ維持の財政負担増大に歯止めをかけたい考えです。
・スマート農業/陸上養殖分野
スマホで開閉を遠隔制御ができる稲作用の自動給水栓枡や、衛星データとAI画像解析技術による生育状況補足などの自律型スマート農業を実装します。同時に、水産資源枯渇の懸念に対し、自己治癒材を採用した大型コンクリ―トタンクによる高級魚の循環式陸上養殖モデルを実装します。魚粉代替のプロテイン採取にブラックソルジャーフライなどのインセクトテックを活用、再エネ利用と併せて持続可能な陸上養殖を追求します。