モノの動かし方には2種類あります。一つは「押し込む方法、push」でもう一つは「引き取る方法、pull」です。
前者はこちらの都合で作ったモノを後工程に持って行くやり方で、売り方で言うと押し売り(?)になります。一方で後者の方法はというと、後工程の望むタイミングで用意したモノを引き取ってもらう方法で、売り方で言うとスーパーマーケットで並んでいる商品からの買い物(?)といえます。
私は工場で作るあらゆる製品は基本的には売れたモノや注文があったモノをタイムリーに作るべきだと考えています。売れないモノはたとえ1個であっても作りすぎのムダだからです。(もちろん、これは一般的な理論やある程度の平準化されたマーケットを前提とするなどの条件に基づいた考えであり、すべてに当てはまることではありません。生産リードタイムの長さによっても、できることとできないことがあります。それと予想を超えた変化、例えば新型コロナウィルスの感染拡大に伴う突然のマスク需要といった事態には当てはまりません)
必要な時に必要なだけのモノを引き取りに行く運搬は、お客様からの注文情報を工場内で上流に向けて発信し続ける動きの表れと考えるのです。必要な時に必要なだけ取りに行くモノづくり。
一方、上流工程は常に準備はしているが、それでも在庫は段取り改善や設計改善もしてなるべく少なく持つように管理されているようにするのです。こうすれば少ない在庫でもお客様のご注文に応えられるので、資金の回転率が向上し儲かるからです。
工程間の運搬は、合理的なモノ作りとお客様への流れを完成させる工場内の必須の実務といえます。先回の「後工程はお客様」の文章と合わせて考えて頂くと更に良い改善が生れるかもしれません。
■著者プロフィール
柿内幸夫
1951年東京生まれ。(株)柿内幸夫技術士事務所 所長としてモノづくりの改善を通じて、世界中で実践している。日本経団連の研修講師も務める。
経済産業省先進技術マイスター(平成29年度)、柿内幸夫技術士事務所 所長 改善コンサルタント、工学博士 技術士(経営工学)、多摩大学ビジネススクール客員教授、慶應義塾大学大学院ビジネススクール(KBS)特別招聘教授(2011~2016)、静岡大学客員教授
著書「カイゼン4.0 – スタンフォード発 企業にイノベーションを起こす」、「儲かるメーカー 改善の急所<101項>」、「ちょこっと改善が企業を変える:大きな変革を実現する42のヒント」など
一般社団法人日本カイゼンプロジェクト
改善の実行を通じて日本をさらに良くすることを目指し、2019年6月に設立。企業間ビジネスのマッチングから問題・課題へのソリューションの提供、新たな技術や素材への情報提供、それらの基礎となる企業間のワイワイガヤガヤなど勉強会、セミナー・ワークショップ、工場見学会、公開カイゼン指導会などを行っている。