日本能率協会は「日本企業の経営課題2021」調査結果を公表し、日本企業のDX取り組み状況をまとめた。DXに取り組む企業は昨年から大幅に増加し、一定の成果も出ているが、既存事業や業務プロセスのデジタル化がほとんどで、変革まではいたっていないことが分かった。またロードマップや経営戦略に落とし込めていない、DX人材の不足などの課題感も明らかになった。
DXに取り組む企業について、すでに取り組みを始めている企業は45.3%となり、昨年の28.9%から大幅に増加。事業規模別では大企業で6割、中堅企業で45%が着手。中小企業は3割弱にとどまっているが、検討中とこれから検討の合計で55.4%となり、中小企業でも関心は高い。
取り組みに対する成果について、成果が出ていると回答した企業が6割に達したが、ある程度の成果が4割を占めており、まだDX推進の途上の段階となっている。
DXで重視していることについて、「既存の商品・サービス・事業の付加価値向上」を重視しているとの回答が 91.4%で最も多く、「営業・マーケティングプロセスの効率化・高度化」が 87.6%、「人材・組織マネジメントの効率化・高度化」が86.7%、「生産プロセスの効率化・高度化」が85%と続き、既存事業の重視と個別業務プロセスに対する取り組みが目立つ。
一方で「抜本的な事業構造の変革」は74.4%とやや低めにとどまった。デジタル活用で業務を効率化するデジタリゼーションに軸足が置かれ、事業や企業風土を変革するデジタルトランスフォーメーションまでは至っていない。
DX推進における課題では、最も多かったのが「人材の不足」で約9割に達した。またDXに対するビジョンや経営戦略、ロードマップが明確に描けていない」も66.2%、「具体的な事業への展開が進まない」も67.1%となった。
結果を受けて日本能率協会KAIKA研究所の近田高志所長は「確かにDXの取り組みは着実に広がっている。一方で、成果状況については「ある程度の成果」が多数であるというのが実態。そうした状況の要因として「DX人材の不足」もあるが、それ以上に、「DXに対するビジョンや経営戦略が明確になっていない」という課題に着目する必要がある。
何のためにDXに取り組むのか、デジタル技術を活用することによって、顧客のニーズや社会の課題に対して、どのような価値を生み出していきたいのか。企業としての意志、目的を明らかにすることが、本来のDXを進めていくうえでの大前提。DX推進部門や担当者任せにするのではなく、自社の存在意義(パーパス)が何かを、経営層と現場の社員が一緒になって考え直すことから始めることが、遠回りかもしれないが、DXの成果に結びつくと言えるのではないか」としている。
同調査は、企業経営者を対象に「当面する企業経営課題に関する調査」を毎年実施しており、今回は2021年7−8月に実施し517 社からの回答を得た。