何気ない会話からおもしろい事を思いついたり、アイディアが生まれたりする事がある。その様な事はまったく頭の片隅にもないのに突然思いついたり、アイディアが生まれたりするのではない。普段から考えている事が人と会話している最中にポコッと出てくるのである。普段考えている事を意識して会話しているわけではないのに考えている事に対するキーワード的な言葉が会話中に出てきて化学反応の様な事が起きる。しかし緊張して話をしていれば化学反応の様な事は起きない。余裕を持ってゆったりと会話をしている時に突然思いつくのである。
ことほど左様に会話は相手に自分の言いたい事を伝えるだけではない。機器部品営業は扱う商材が中間材ということもあって相手と会話をして売り込むというよりは説明して売れることに重点を置くのは自然である。だから販売員は自社の推奨する商品の良さをしっかりと学んで、相手にその良さをわかってもらえるように紹介をする営業力をつけてきた。機器部品の特性から見て至極真っ当と思われる。令和も3年になってDXを意識したりリモート営業やオンライン営業がスタートしている。
販売形態も宅配型や通販型の比率がふえている。この様な状況になればわざわざ訪問して商品紹介等の説明をしなくてもよいということになる。訪問をして商品紹介という売り込みをしてきた販売員の役割は低下する。営業は会社にとって重要な部門なのに販売員の役割の低下は問題だ。
確かにデジタル技術の発達で販売員の役割が他の手段で実行されるようになってくる。しかしカバーできる役割はあくまでも守りの部分と理解すべきである。新しい市場や見込客に踏み込む時や隠れている需要を握り起こす時の様な営業は対面営業が断然有利だ。
対面営業を販売員に期待するなら、商品の良さの説明一本で攻めることから距離を取ってみることが必要だ。良い商品というアピールは大事であるが顧客に合ったアピールができるまでの会話の方が実は重要なのだ。攻めるとは陣地を取りに行くことだ。営業戦線の攻めも新市場や隠れている見込客を取りに行くことである。攻めの営業は緊張感のある初対面から始まる。初対面のあいさつの後にこれといった会話がないために得意とする商品説明に移るしかなくなる。脳科学者が言うには人間の脳には生まれた時から他人と関わりたい、他人を理解したいという衝動が組み込まれていると言う。脳はお互いを理解したがっているのに互いが商品の良さをアピールする人、そしてそれを購入する人としか理解してないのはもったいない話である。
相手を理解しようとすればドーパミンという脳内物質が増加し、ますます知ろうとする快感が生まれるのが人間の脳のようだ。その脳に従って相手を知れば知るほど会話は弾む。会話の広がりによって情報の質量は多くなり商機は当然増える。だから緊張の初対面はあせらずにまずは相手を知ろうとする所から話を展開させればよいのである。何を知ったらいいかと若干の販売員は聞いてくるが脳は相手を理解しようとという衝動はあってもどのように理解したらいいかは鍛錬しだいなのだ。鍛錬を重ねることによって相手を理解するためのスキルがプロ級になる。しかし機器部品販売員は顧客に伝えようとすることに集中してきたために、相手を理解しようという鍛錬が停止したままだったようだ。令和の営業では商品やサービスの良さを伝えようとする前に顧客のことを理解してみようとする鍛錬を開始しなければならない。