営業を2〜3年経験しているが同期と比べて、上達しないと悩み、周囲にも営業に向いていないかなと思われている販売員がいる。一方では2〜3年の経験で顧客の対応が良く、周囲には営業向きだと思われている販売員がいる。前者は営業に不向きで後者は営業向きだとは一概には言えない。2〜3年の経験で見えるのは人当たりの良さ、ぎこちなさや口数の多さ、少なさの印象からくるものである。一般的に言われる器用な人、不器用な人の印象と同じようなことだ。営業は人と絡むことを生業としているから天性的に人当たりの良さは営業にとって有利である。
又口数が多い人も相手の寡黙を補う場合には有利になる。しかし、有利であっても営業に向いているわけではない。むしろその後の営業が人当たりの良さや口数の多さに頼りつづけるやり方であれば営業力の成長はなく、平凡な販売員で終わってしまう。つまり経験を重ねて扱い商品精通して、長年の取引先を相手に雑談や世間話をまじえるから密着するタイプの販売員である。
それでは人当たりがぎこちなく口下手だという印象を持たれた販売員の営業はどうであろうか。人は皆、長い時間一緒にいるとオキシトシンという愛情ホルモンが強く出て、人間関係ができると言われているから長年の取引先を相手にすれば人当たりのぎこちない人でもそれなりの関係がつくれる。口下手な人でも取引先にもまれて口数は少なくても、スムーズに話ができるようになる。つまり両者とも入社2〜3年の印象では向き不向きはわからない。その後の育ち方によるのである。販売員の成長に一番影響を与えるのは販売員の相手をする客先である。同じ顧客や同じ様な顧客を相手にすれば無難な営業が身について、先述した通りの平凡な販売員に育つ。
昭和の成長期のように商品の種類が次々と増え、見込客が増えた時代は顧客や新規の見込客が色々と新しい経験をさせてくれた。だから販売員は機器部品の市場に対する感性が好運にも身についた。平成の大半は大きくなった市場がほぼ固定され、販売店の顧客は大きく変わる事がないまま過ぎた。したがって昭和のように新しいことを求める外向き営業でなく、顧客からどれだけ多くを受注をするかという内向き営業になった。それで顧客の対応もよろしく手慣れた営業する販売員を営業向きとする傾向にあった。
それでも大手の顧客を担当する販売員は好運である。機器部品を受注する折には先端技術による製品構造や製造に関して学ぶ機会がある。扱い商品に関して専門的に聞かれる事が多いため商品技術の勉強を余儀なくされるし副次的に扱い商品のアプリケーションを次々と知ることができる。それに大手の顧客は小手先の営業では通じない面があって、しっかりした営業の手順というものを学べる。だから大手客先の担当は内向き営業主力の時代には一級の販売員になる傾向にあった。令和に入り色々な事が目に見えて変わってきた。
営業は内向きから外向きに変わる時である。内向きは効率を求める傾向があるが外向きは先にある効果を求めてチャレンジしていくことにある。令和の販売員の成長に影響を与えるのは顧客に変わりはないが会う相手を固定して、営業を経験するだけではダメなのだ。
なぜなら令和が進んでいけば新たな需要を生み出す人や部門は変わる可能性が大であることを想定しなければならないからだ。そうなれば商品力を武器にして競合切り替えや案件取り込み営業では成長軌道に乗らない。令和の初期にはやはり販売員の名刺がどれだけ速く客先向けになくなっていくかという育ちが一番いい。