「ゴルゴ13」はプロである。依頼された仕事はどんな困難があっても必ず遂行し、その成功率は99%以上とされる。しかし超一流と言われるゆえんは、そこだけではない。例えば、失敗した時は報酬の受け取りを拒否し、失敗の原因を追究し、最後には責任を果たすのもそうだ。不発弾によってミッションが失敗した時、「ゴルゴ13」は武器商人が意図的に不発弾をつかませたことを突き止め、最後はそれを始末した。
依頼人の嘘によって失敗した時は、失敗の原因をとことん調べ、最終的には依頼人の嘘にたどり着き、それを始末した。またルールに厳格であることもそうだ。握手をしない、後ろに人を立たせない、依頼人とは2度と会わないなど独自のルールがある。自分の身を守るためにルールを整備し、それを守れない場合は仕事を受けない。圧倒的な知識と技術はもちろんだが、仕事に対する責任感とルールへの厳格さも驚異的な成功率を支えている
2021年9月24日、「ゴルゴ13」の作者である漫画家のさいとう・たかを氏が亡くなった。氏も「ゴルゴ13」同様、プロフェッショナルだった。「ゴルゴ13」は、作者こそさいとう・たかを氏となっているが、その制作過程が分業化されているのは、よく知られている話だ。シナリオ、作画等の工程には各担当がいて、それを統括しているのがさいとう氏だった。原作も作画も漫画家が行うのが常識であった時代、全く正反対のやり方を導入し、業界内外から非難を受けながらも、それを遂行した。
そして「ゴルゴ13」を人気作品に押し上げ、長寿漫画とし、ついには「世界で最も発刊数が多い単一漫画シリーズ」としてギネスにも認定された。氏は「ゴルゴ13」という素晴らしい作品を世に生み出しただけでなく、永遠に続けられる分業体制という仕組みも作り上げた。「だが、物語は続く」氏は漫画界に「イノベーション」を起こした変革者だった 。
近年、製造業ではさまざまな問題が噴出している。人材不足、熟練者の技術承継の問題が深刻化し、ロボット導入やデジタル技術による熟練者の感覚の可視化などが行われているが、目先の課題解決で満足していないだろうか。企業として永続するためには、仕組みそのものを見直す必要もある。また検査不正も問題となっているが、ものづくりのプロとして適切な行為であったか。
「ゴルゴ13」の連載期間は53年目に突入し、氏が亡くなってもなお物語はまだ続く。それを可能にしたのは、厳格なルールと遵守、さらに環境の変化に追従し、柔軟に対応できる仕組みだ。不確実な時代だからこそ「ゴルゴ13」さいとう・たかを氏という最高のプロフェッショナルから学べることは多い。