私は新型コロナウイルス感染拡大対応でずっと家にいます。そこで久しぶりに自分の部屋の模様替えを始めたのですが、以前に苦労して解いた知恵の輪を見つけました。
その知恵の輪は、見た目はシンプルで誰でも簡単に解けそうなのですが、とても難しいモノでした。どうやっても外せなかったのですが、突然ひらめいてやってみたら、いとも簡単に解けました。われながらすごい発想の転換であり、自分の発想力や頑張り(大げさですが実感です)にかなり感心したものでした。
しかし、今回は、どうしても外せないのです。その時の発想の転換が何だったかも全く思い出せません。メモしておけばよかった! といまさら思っても後の祭りですよね。
工場でも同様です。いつも作っている製品ならば工具や部品の配置も工夫してスムーズに生産ができるのに、3カ月に一度の少量品の生産になった途端に設計図を見ながら、使う道具を考えながらと、まるで初めて出会う作業のようになってしまう工場が多いものです。
これは「もう一度生産する」ことを前提に製造作業を見える化していないことが原因です。たとえ、数年前に一度作ったことがあるだけという製品でも、同じ製品であれば前回のやり方を繰り返せば作れるはずですね。ですから、一度目の生産の時に「ベストなやり方」を、時間をかけてでも見つけ出して記録してデータ化しておけばいいのです。
組み立て順に部品を並べる入れ物を作ったり、工程を写真で記録したり、実物大で部品の位置を形跡表示したテーブルクロスを作ったりして次回の生産に生かしたいものです。少量品の生産にこそ、モノづくりの実力が現れるのです。
■著者プロフィール
柿内幸夫
1951年東京生まれ。(株)柿内幸夫技術士事務所 所長としてモノづくりの改善を通じて、世界中で実践している。日本経団連の研修講師も務める。
経済産業省先進技術マイスター(平成29年度)、柿内幸夫技術士事務所 所長 改善コンサルタント、工学博士 技術士(経営工学)、多摩大学ビジネススクール客員教授、慶應義塾大学大学院ビジネススクール(KBS)特別招聘教授(2011~2016)、静岡大学客員教授
著書「カイゼン4.0 – スタンフォード発 企業にイノベーションを起こす」、「儲かるメーカー 改善の急所<101項>」、「ちょこっと改善が企業を変える:大きな変革を実現する42のヒント」など
一般社団法人日本カイゼンプロジェクト
改善の実行を通じて日本をさらに良くすることを目指し、2019年6月に設立。企業間ビジネスのマッチングから問題・課題へのソリューションの提供、新たな技術や素材への情報提供、それらの基礎となる企業間のワイワイガヤガヤなど勉強会、セミナー・ワークショップ、工場見学会、公開カイゼン指導会などを行っている。