ほんの少し前までは、少子高齢化による人手不足が大きな社会問題であり、それまで当たり前であったコンビニの24時間営業の是非などがマスコミをにぎわしていた記憶があります。しかし新型コロナウイルス感染拡大で仕事そのものがなくなってしまい、この話題はすっかり消えてしまいました。
しかし少子高齢化で労働生産人口の減少がさらにスピードアップする日本において、労働生産性の向上は今後も絶対に必要なテーマであり、しっかりと研究したいものです。
私たちは「人手不足」という言葉を普通に使っていますが、「人不足」と「手不足」は全く別の問題です。人不足は技術・技能の蓄積を必要とする能力の不足のことであり、採用、育成、習熟といった人材への準備を怠ったことが原因であることが多いと思います。これを即解決することはできないので、中長期の人材戦略が必要です。
しかし、忙しい人の仕事内容をよく観察してみると、誰でもが対応できる仕事もかなりしていることが多いのです。その人にしかできない仕事に集中・専念できるように切り分けて、アシスタントを付けて解決できることがしばしばあります。
同様に考えて、一時的な増産に対しては、手不足部分を時間単位での派遣増員や間接も含めた他部門からの応援によって解決が可能です。ただし注意しなくてはいけないのは、その状態が当たり前になってしまうことです。普段からの協力体制の構築は大切なことですが、いつも手不足が発生するようであれば、生産計画や段取り方法などを刷新して簡易自動化や工程数削減といった本格的な改善に着手するべきです。そしてこれからは、ICTなども勉強してさらにレベルの高いカイゼンを始めたいものですね。
■著者プロフィール

柿内幸夫
1951年東京生まれ。(株)柿内幸夫技術士事務所 所長としてモノづくりの改善を通じて、世界中で実践している。日本経団連の研修講師も務める。
経済産業省先進技術マイスター(平成29年度)、柿内幸夫技術士事務所 所長 改善コンサルタント、工学博士 技術士(経営工学)、多摩大学ビジネススクール客員教授、慶應義塾大学大学院ビジネススクール(KBS)特別招聘教授(2011~2016)、静岡大学客員教授
著書「カイゼン4.0 – スタンフォード発 企業にイノベーションを起こす」、「儲かるメーカー 改善の急所<101項>」、「ちょこっと改善が企業を変える:大きな変革を実現する42のヒント」など
一般社団法人日本カイゼンプロジェクト
改善の実行を通じて日本をさらに良くすることを目指し、2019年6月に設立。企業間ビジネスのマッチングから問題・課題へのソリューションの提供、新たな技術や素材への情報提供、それらの基礎となる企業間のワイワイガヤガヤなど勉強会、セミナー・ワークショップ、工場見学会、公開カイゼン指導会などを行っている。
■詳細・入会はこちら https://www.kaizenproject.jp/
■儲かるメーカー改善の急所101項