ニーズを収集 社内で共有
株式会社才流の岸田です。今回は少し振り切ったテーマにチャレンジしてみたいと思います。
メーカーやサービスの提供者として、顧客が必要とする製品、買っていただける製品をつくるというのは当然のことですが、この当たり前を実現することが難しいのも事実。顧客が買いたくなる製品をつくるにはどうしたら良いのでしょうか?
■製品企画・開発部門と顧客との距離が遠くなっている
最近、製造業の経営者と話をしていると「組織が営業、技術で分断してしまっていて、製品開発がうまく進まない」という悩みをよく聞きます。
製品を企画・開発する部署と顧客の距離が遠くなってしまうのは一定以上の規模になると起きうる組織課題です。顧客が必要なもの、欲しくなるような製品がなかなか出てこない要因が、そこにある場合も少なくありません。
■顧客の声を開発部門に正しく伝えるのが営業部門
私はこれまで製造業のお客さまをはじめ、広くITサービス、Webサービスの世界で営業やコンサルティングの仕事をしてきました。常に気を付けていたのが、営業やコンサルタントなど顧客との接点を持つメンバーが、自社の開発部門やソフトウエアベンダーに対して常にフィードバックを欠かさないことです。
顧客のニーズや現在のプロダクトの課題をフィードバックすることで、「顧客ニーズを満たすための機能を実装してもらう」サイクルを作っていました。自分だけでは顧客のビジネス上のニーズに応えたり、課題解決をしたりできなかったので、ソフトウエアメーカーや自社の開発部門の協力が必要不可欠だったからです。
特にITサービスの導入コンサルティングをしていた際は、「自分たちのような中間ベンダーの要望やニーズでは開発部門やソフトウエアベンダーを動かせない。エンドユーザーの生の声こそがソフトウエアベンダーを動かせる」と先輩から強く教えられてきたので、「誰が何を言うか」を強く意識していました。
ソフトウエアベンダーも開発部門も、自分が作ったものがエンドユーザーにどう評価されているかはとても気になるものです。キチンとその声を開発部門に届けることは、顧客接点となっている部門にとっては重要な役目。それを繰り返すことで製品・サービスは顧客にとって使いやすく、便利な製品に磨かれていきます。
■キーエンスの利益の源泉は顧客情報の共有
製造業でも、前述のように顧客の声をフィードバックする仕組みを組織として実現している企業があります。営業利益率が50%を超える株式会社キーエンスです。
キーエンスでは「顧客ニーズを収集し、それに基づく製品開発を行う」というルールが徹底されています。40代後半のキーエンスOBに聞くと、売上目標以外に顧客のニーズを記録するニーズカードの提出件数目標があり、これはITシステムが普及する以前からの取り組みで、若い頃は紙で収集していたとそうです。集まったカードは製品企画・開発のメンバーが確認し、必要に応じて顧客へインタビューも行っていると言います。
つまり、SFAやCRMといったツールではなく、顧客の課題やニーズを発見するための仕組みを持ち、それを営業・技術を越えて共有する文化がキーエンスの利益の源泉と言えます。
■IT活用で顧客情報の収集を効率的に
顧客から課題やニーズを拾い、買っていただける製品をつくるという基本に立ち返り、自社でそれが実践できているかを振り返ってみませんか?
今はデジタルツールも安価になり普及しています。SaaSツールを利用すれば、月々数万円から、しかも特別なIT知識がなくても活用できる時代になりました。「顧客が買いたくなる製品をつくる」ためにも、前述のキーエンスのように、顧客のニーズや課題を営業が正しく拾い、社内へフィードバックするための制度をつくり、ITツールを使って効率的に顧客情報の収集に取り組んでみてはいかがでしょうか。
才流ではBtoBマーケティングの戦略設計から実現の伴走支援まで、コンサルティングサービスを提供しております。取り組みに関心を持っていただけるようでしたら、ぜひご相談ください。
岸田 慎平 株式企業才流 コンサルタント
新卒でIBMコンサルティング部門にて業務改革&IT領域のプロジェクトを経験後、BtoB製造業に特化した販売支援をするベンチャーへ転職。大手企業から中小企業まで幅広く、150社以上の販売戦略の立案から施策実行までをトータルに支援。自社の営業企画やマーケティング、営業マネジメントなどを経験したのち、2020年より株式企業才流にてコンサルタントとして活動。中小製造業の経営企画や事業戦略策定、IT化の支援などにも取り組み、製造業を総合的に支援できるコンサルタントを目指して取り組んでいる。