横河電機とNTTコミュニケーションズ(NTTコム)は、OT領域とIT領域の知見を融合させ、製造業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援する「共同利用型OTクラウドサービス」の共同開発・提供に関する業務提携を締結した。両社は、IT領域で主流となっているクラウド化の考えをOT領域に応用し、「共同利用型OTクラウドサービス」の提供を通して、ものづくりの柔軟性向上やデータ利活用を促進する製造業のDXを支援していく。
現在、生産制御システム(DCS)や製造実行システム(MES)など製造業の生産設備やそれを制御するシステムは、操業を止めないことを最優先に、可用性や堅牢性を重視してオンプレミスの環境に構築されている。そのため即時的なシステム変更などの対応が難しく、高い柔軟性を実現するシステム構成が求められている。
それに対し両社は、DCSやMESなど特定のOT領域のシステムをNTTコムの「SmartDataPlatform」上に構築し、システムの更改や機能拡充、制御内容の変更などに柔軟に対応できるようになるサービスとして提供する。
またDCS、MESのクラウドサービスにOT-ITオーケストレーション機能を加え、同サービスを利用している企業間での連携を可能にする「共同利用型OTクラウドサービス」の開発・提供に取り組む。迅速なシステム更改や機能拡充をオンデマンドに実現することに加え、利用者間のデータを相互に活用してサプライチェーン全体の最適化を実現する。
具体的には、脱炭素に向けた取り組みについて、事業者単独の二酸化炭素(CO2)排出だけでなく、サプライチェーン全体から発生するCO2排出量を抑える製法を特定できるようにするなど、データ分析を軸とした最適化を実現できるようになる。
両者の役割は、横河電機はOT領域における制御や製造管理に関する知見を活用した「共同利用型OTクラウドサービス」を提供するためのシステム開発を担い、NTTコムはIT領域におけるセキュリティやクラウドに関する知見を活用した「共同利用型OTクラウドサービス」を提供するためのプラットフォームを開発する。
2022年2月にDCS、MESのクラウドサービス化に関する実証実験を2022年2月に開始し、2022年度中のサービス開始を目指す。発展型の「共同利用型OTクラウドサービス」は、22年度中に共同実験に着手し、24年度中のサービス提供を予定している。
横河電機の奈良寿代表取締役社長は「当社が提唱している『System of Systems(SoS)』実現に向けた重要な協力関係が結ばれた事を意味する。ITとOTを融合したサービスによって、社会に存在するさまざまなシステムを統合させて全体最適化を図り、今まで解けなかった社会課題の解決に貢献していく」とし、NTTコムの丸岡亨代表取締役社長は「プラント制御システムのクラウド化に要求される高いレベルのリアルタイム性や可用性、セキュリティ要件に、弊社が有するエッジやセンターなど分散型のクラウドシステム、低遅延ネットワークを駆使して応えていく。協業を通じて製造業のサプライチェーン全体の最適化を支援し持続可能な社会に貢献できる産業モデルを創造していく」としている。