先回は私の50年前のアルバイト経験の話をいたしましたが、今回はそれの説明になります。
仕事を教えているつもりでも、よく見てみると手順や動作、配置といった作業しか教えていない人が多いものです。
作業手順を教えることは確かに重要ですが、何のために作業して、今の作業は最終製品のどの部分を作っていて、どういう品質が求められているのか、そしてその作業を通じて何を考えて行動しなければならないのか……といったことを自ら考えて行動できるように、本当の意味で仕事について教えなければ応用は利かないし、教わった本人の成長もなければ技能も上がらないでしょう。先回に書きました私の皿洗い経験はまさにその例に当たると思います。私は作業だけ教わり、仕事を教えてもらえなかったので、工夫もできずモチベーションが上がらなかったのです。
OJT(On the Job Training)と称して、作業ばかり教えている監督者も見かけるのですが、その監督者自身をよく見ると仕事力が低いことが多いと感じています。一方で作業ばかり覚えて一向に仕事を覚えない人もいるようです。「ナゼ?」、「何のために?」の質問がない人は、作業だけを覚えようとしている表れともいえるでしょう。どちらもレベルが低いのです。
教える側も、教わる側も、仕事をしっかりできるように頑張りましょう! その方が成果もずっと大きいのです。そして楽しいし。これって大切なことだと思います。
■著者プロフィール
柿内幸夫
1951年東京生まれ。(株)柿内幸夫技術士事務所 所長としてモノづくりの改善を通じて、世界中で実践している。日本経団連の研修講師も務める。
経済産業省先進技術マイスター(平成29年度)、柿内幸夫技術士事務所 所長 改善コンサルタント、工学博士 技術士(経営工学)、多摩大学ビジネススクール客員教授、慶應義塾大学大学院ビジネススクール(KBS)特別招聘教授(2011~2016)、静岡大学客員教授
著書「カイゼン4.0 – スタンフォード発 企業にイノベーションを起こす」、「儲かるメーカー 改善の急所<101項>」、「ちょこっと改善が企業を変える:大きな変革を実現する42のヒント」など
一般社団法人日本カイゼンプロジェクト
改善の実行を通じて日本をさらに良くすることを目指し、2019年6月に設立。企業間ビジネスのマッチングから問題・課題へのソリューションの提供、新たな技術や素材への情報提供、それらの基礎となる企業間のワイワイガヤガヤなど勉強会、セミナー・ワークショップ、工場見学会、公開カイゼン指導会などを行っている。