「人に教わってみんなができるようになる一番難しい技術は?」と聞かれたら皆さんは何とお答えになるでしょうか。私は自動車の運転ではないかと思います。目、耳、手、足の全てを使って次々に起きる変化に、全て一人だけで即座に対応するという作業のレベルは並大抵ではありません。
しかし多くの人が40時間ほどの教習で一通り運転できるようになり、自動車運転免許証という国家資格を手に入れます。これは習う人がとても優れているということではなく、教育・訓練方法がきちんと整備されており、どこの教習所のどの教官でも教えられる仕組みができているからに他なりません。
工場の中で、自動車の運転より難しい仕事を探そうとすると結構大変です。ベテランの方が持っている技術・技能を若い人が引き継げないという嘆きをよく耳にしますが、誰でもが理解できる教育・訓練方法が作られていないことが最大の原因といえると思います。
技術は見て盗むもの、仕事は自ら習得するものといった姿勢論はありますが、強い企業ほど仕事は教え方まで含めて仕組化して高度なレベルもきちんと伝えているのです。
今は新型コロナウイルス感染拡大で、世の中のあらゆることが変わろうとしています。チャールズ・ダーウィンの有名な言葉で『生き残るのは最も強いものでも最も賢いものでもない。最も変化に敏感なものが生き残る』がありますが、少子高齢化、労働人口の急減の変化の中で、この仕組み作りも重要な改善テーマだと考えています。
■著者プロフィール
柿内幸夫
1951年東京生まれ。(株)柿内幸夫技術士事務所 所長としてモノづくりの改善を通じて、世界中で実践している。日本経団連の研修講師も務める。
経済産業省先進技術マイスター(平成29年度)、柿内幸夫技術士事務所 所長 改善コンサルタント、工学博士 技術士(経営工学)、多摩大学ビジネススクール客員教授、慶應義塾大学大学院ビジネススクール(KBS)特別招聘教授(2011~2016)、静岡大学客員教授
著書「カイゼン4.0 – スタンフォード発 企業にイノベーションを起こす」、「儲かるメーカー 改善の急所<101項>」、「ちょこっと改善が企業を変える:大きな変革を実現する42のヒント」など
一般社団法人日本カイゼンプロジェクト
改善の実行を通じて日本をさらに良くすることを目指し、2019年6月に設立。企業間ビジネスのマッチングから問題・課題へのソリューションの提供、新たな技術や素材への情報提供、それらの基礎となる企業間のワイワイガヤガヤなど勉強会、セミナー・ワークショップ、工場見学会、公開カイゼン指導会などを行っている。