FAセンサの市場が好調に拡大している。旺盛な設備投資需要がけん引しており、過去最高を超える勢いを見せている。しかし一方で、生産能力を超える需要により半導体を中心とした部品不足や、原材料の不足が影を落とし始めており、受注が膨らむ一方で売り上げの伸びが鈍りつつある。新型コロナウイルス感染症の影響で巣ごもり需要やテレワークの増加、無人化・省人化投資の拡大などが追い風になるなかで、海外ではコロナによる工場のロックダウンなどの影響が玉突き状態で供給不足を招いている。しばらくはこうした状況が継続するとみられている。
日本電気制御機器工業会(NECA)の検出用スイッチの出荷額は、2020年度は1007億8100万円(19年度比99.1%)と微減となった。20年度は新型コロナの感染拡大であらゆる面の活動が停止、あるいは停滞したことにより上期の需要が低調であったことが影響した。しかし、20年度下期から2桁近い伸びを示し回復基調が顕著であったが、21年度に入ってもこの状況は継続しており、21年度上期(4月~9月)は595億8700万円と、前年同期比125.0%となっている。国内が123.6%の336億9100万円に対し、輸出は127.0%の258億9600万円と、輸出の伸びが大きい。
NECAでは、21年度の検出用スイッチの出荷額を1080億円(20年度比7.1%増)と予測しているが、現在の出荷ベースが続くと1200億円前後と、過去最高に達することになる。ただこのところ納期対応が課題になってきており、品不足による売り上げ計上ができないことが懸念されている。注文があるのに納品ができないという思わぬ要因が今後の統計に表れてきそうだ。
海外ではアジアの新興国でコロナによる工場閉鎖などの影響がみられるものの、中国、米国などを中心に工場のフル稼働が継続している。この結果、工作機械の受注はこの1年間前年同月を上回り、過去最高に迫る勢いで増えている。半導体製造装置も過去最高ペースで受注が拡大しているが、部品関係が素材の不足などで生産が計画通り進んでいないことで、納期は大幅に遅延している。部品がないことで機械・装置が作れず、これがさらに部品・素材の不足に拍車をかけるという皮肉な結果を生み出している。
納期が未定という部品や素材も多く、1年半先の注文も入り始めるなど異常な状態が継続する中で、架空の注文を警戒する声も強まっている。為替の円安基調もあり、素材価格の上昇が継続していることから、製品価格へ転嫁して、価格を値上げする動きも強まっている。納期優先の状況だけに、価格改定はすんなり受け入れられる方向にあるようだ。
FAセンサも半導体をかなり使用していることから、各センサメーカーは、市場の需要をみながら、製品計画、生産計画などで、これまで以上に慎重な取り組みを進めつつある。
コロナ禍と人手不足で製造業は製造の無人化・省人化を目指した自動化を進めつつある。ロボットやAGV(無人搬送車)の活用、リモートでの工場監視などだ。
例えば、巣ごもりなどで通信販売の利用が増加し、物流業界の投資が著しい。AGVをはじめ、仕分け作業も含めた自律的な搬送システム実現に向けた取り組みが進んでいる。AGVでは、搬送軌道をフレキシブル化した自動走行でのインテリジェントセンサの技術開発が進んでいる。2Dや3Dのレーザーセンサ技術の応用しながら、搬送、追跡や障害物を検知しながら実現している。今後はAI技術を活用して搬送履歴に基づいた最適な搬送経路策定や、搬送と作業を同時処理できるような開発も志向されている。
FA用途以外の採用も増加
もうひとつの期待分野が、食品・医薬品・化粧品の3品業界で、安定した需要が継続しているのが特徴だ。製造ラインにおける各種認識・識別、不良品検知などの用途で、重要性を増しており、「安全」「安心」といったキーワードに即している。製品トレーサビリティ用途に加え、このところは人手不足などに対応して、ロボットを活用に向けた投資も積極的に行われていることから、今後も期待市場として注目される。
FAセンサの中でも市場の大きい光電センサは、LEDや半導体レーザを光源にした非接触センサとして、主にワーク(製品・部品)の有無確認のために用いられている。検出方式は透過型、回帰反射型、拡散反射型などがあり、年々性能が向上している。特に光ファイバー式は、先端のファイバー部のラインアップが多彩で、取り付けや用途に合わせて選定がしやすくニーズが高く、数百種もラインアップをそろえているところもあり、あらゆる用途に用いられる。
光電センサ技術を発展させた透過型デジタルセンサとしては変位センサも注目されている。帯状レーザ光で測定幅10ミリを繰り返し精度1μmの精度で測定ができる。サイズも小型のため、取り付けスペースの制約も少ない。
FAセンサがロボット向けでの用途開拓が進むなかで、測域(レンジ)センサのアプリケーションも拡大している。測域センサは、周囲の障害物などの状況を把握する。レーザ光線で対象物までの距離を測定し、270度前後の視野に対して自分を中心に平面地図のような測域情報を得ることができる。誤動作が許されないことから検出スキャン時に発するパルスの計測方法に各社独自のアルゴリズム採用をして周囲環境に干渉されないようになっている。
こうした特性により、AGV(無人搬送車)や移動ロボットなどに搭載することで、安全防護を確保しながら高精度な誘導用位置測定を可能にする。光やほこり、汚れなどの悪環境下でも高信頼の検出ができる。しかも、検出フィールドの設定が自在にできることで、用途ごとのパターンに応じた稼働も可能になっている。
長距離で高感度の検出が可能なため、最近では立体駐車場や、トンネル前での車両の高さ検出など、屋外や交通分野、さらに安全分野を中心に用途が拡大している。この領域では、画像データと組み合わせて精度を向上させる取り組みもなされており、活用が広がっている。
対応進む「IO-Link」接続
近接センサは、耐環境性に優れて、高温・多湿、水中などで使用できるという他のセンサにはない大きな特徴がある。直径が3ミリの超小型タイプや、オールメタルタイプなどラインアップも増え、金属体、非金属体の混流ラインでも使用できる。検出距離は、数ミリ~数十ミリが一般的だが、最近は長距離タイプも発売されている。このほど近接センサで、1台に2つの出力機能を内蔵した製品もある。従来の一般的な近接センサは出力が1つで、検出領域内でON/OFF出力する動作点が固定あったが、1台に2つの出力機能を内蔵することでセンサ2台分の機能を内蔵。
検出領域内への検出体の移動に合わせて動作点を2点設定可能で、それぞれの出力の動作ロジック(ON/OFF)を組み合わせることで、1台で最大4エリアの検出ができる。例えば工作機械の自動工具交換では、工具の有無、取り付け位置のずれなど、正常・異常の検出を2台の近接センサで行っていたが、これを1台で対応できることになり、設置作業を効率化できる。
一般的な近接センサの検出距離は1~10ミリぐらいと短く、センサが安定して検出できるための位置設定の調整作業に非常に手間がかかり、作業者によって設置のバラつきが出るという課題もあった。この作業をパソコンの専用設定ツールを使用することで、最適な動作点をオートチューニングで簡単に設定できるようにした。
近接センサ本体に搭載の動作表示灯を確認しなくても、パソコンから動作状態や動作点をモニタリングすることができ、より安定した検出が可能になる。 また、近接センサの設置位置調整を簡単に行えるように、ティーチング補正できる機能を内蔵した製品も発売されている。設置位置の微調整が不要で、立ち上げ時間を大幅に削減できる。
超音波センサは、比較的長距離・広範囲の検出をできるのが特徴であるが、近距離での特性も向上している。また、超音波センサを複数同時使用時の音波のクロストーク対策として、自動同期機能を内蔵した製品も発売され、信頼性も高まっている。さらに、本体に2つのマイクロコントローラーが搭載することで、接続されたセンサや自身のハードウエア、そして各コンポーネントが正しく機能しているかどうかを相互に監視。カテゴリ3PLdに準拠した人などとの衝突を回避して安全確保につながる。
安全対策用センサもマットスイッチ、ライトカーテンなど、接触式、非接触式など多様で用途に応じ使い分けされている。なかでもセーフティレーザスキャナは、ソフトウエアで危険領域を限定でき、ロボットが使用されている工程や、無人搬送車などにも搭載されている。セーフティライトカーテンも、設計や取り付け・調整などの手間を省く改良がされ使いやすさが増している。光を用いた同期をすることで、省配線を実現、複数のセンサを使用しても干渉しない工夫がされているタイプもある。従来は誤作動による原因追究に工数がかかっていたが、LED表示や通信により、状況を知らせる機能も各社強化しており、導入後の工数も削減できる。
人手不足が深刻になる中で、配線作業の省力化も重要になっている。以前からセンサの配線を減らす取り組みは行われてきているが、このところさらに注目されている。それは一般的なセンサはON/OFFなど有無検出機能が主であることが多いなかで、省配線機能にセンサの見える化情報を付加するものだ。センシングレベルをモニタや、異常箇所のリアルタイム通知などを可能にし、装置やセンサの予防保全にもつながる。
FAセンサの機能拡張につながるとして注目されているのがIO-Linkだ。ⅠO-Linkは拡張性に優れた通信で、いままで利用できなかったセンサ内部の情報をユーザーがアクセスでき、しかもリアルタイムでクラウドベースでも利用できることで、最適制御、予知保全などへ大きく利用領域が広がる。
センサのON-OFF情報だけでなく、状態管理、緊急判断といった場面でのAIと連携した活用も進む。IO-Link対応のセンサは各社から対応製品が発売されている。
FAセンサは工場などの製造業以外での用途も拡大している。高い環境特性と信頼性が背景にある。コロナ禍で製造業、非製造業とも働き方が大きく変化してきているが、それを支えている要因の一つにFAセンサの活用がある。FAセンサを取り巻く環境に今のところ死角は見えず、IoTやDX(デジタルトランスフォーメーション)への対応の中でさらに普及が加速しそうだ。