儲かるメーカー改善の急所101項【急所46】職人の基準

ニセ者の職人がのさばっていないか。

私は「職人」という言葉が好きです。職人さんは一つの困難なことにコツコツと研鑽を重ねて、誰にもまねできない卓越した技術・技能を身に付けている人のことですから、当然のことですがとても憧れます。いわゆる、「職人技(わざ)」によって、製品の技術的な優位性を引き出したり、あるいは誰をもうならせたりする仕事ができる人であって、企業が大切にするべき本物の人材のことをいっています。このような人は企業にとってはまさに「人財!」といえるでしょう。このような高い技術・技能を持った人をたくさん育てて行けば会社はさらに発展すること間違いなしです。

しかし、一方でこの職人という言葉には注意も必要です。それほど難しい仕事ではないにもかかわらず、その工場ではたまたまその人しかその仕事をできないので、その人のことを職人だと本人も周囲の人も勘違いしていることもあるのです 。

その人は自分の仕事をきちんと体系化していないので、自分の仕事を動作レベルでしか表現できません。そのため説明がとても分かりにくいのです。しかしその分かりにくいという欠点を、「彼は職人だから……」などという言い方で周囲も許してしまっていたりします。その上、自分の仕事を抱え込んで外から見えなくすることで現在の地位を守ろうとしたりします。そういうことですから人を育てる努力もしてくれません、というか育てられないのです。

とんでもないことですが、このような「人罪↓」を職人だと勘違いしている工場は残念ながら少なくないのです。本物の「人財!」は人を育てられるし、社内だけでなく社外からも評価される技術・技能を持っているのです。

アフターコロナにすることの一つとして、全員の仕事のレベルアップにチャレンジしませんか。“本物の人財”育成プロジェクト! です。

■著者プロフィール

【略歴】柿内幸夫 1951年東京生まれ。(株)柿内幸夫技術士事務所 所長としてモノづくりの改善を通じて、世界中で実践している。日本経団連の研修講師も務める。経済産業省先進技術マイスター(平成29年度)、柿内幸夫技術士事務所所長 改善コンサルタント、工学博士 技術士(経営工学)、多摩大学ビジネススクール客員教授、慶應義塾大学大学院ビジネススクール(KBS)特別招聘教授(2011~2016)、静岡大学客員教授。著書「カイゼン4.0-スタンフォード発 企業にイノベーションを起こす」、「儲かるメーカー 改善の急所〈101項〉」、「ちょこっと改善が企業を変える:大きな変革を実現する42のヒント」など。

一般社団法人日本カイゼンプロジェクト
 改善の実行を通じて日本をさらに良くすることを目指し、2019年6月に設立。企業間ビジネスのマッチングから問題・課題へのソリューションの提供、新たな技術や素材への情報提供、それらの基礎となる企業間のワイワイガヤガヤなど勉強会、セミナー・ワークショップ、工場見学会、公開カイゼン指導会などを行っている。
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