作業改善ばかりを考えるな。その作業が、会社に利益をもたらす仕事になっているかを考えよ。
現場改善を「作業改善をすること」と捉えている会社は意外と多いものです。作業を改善することで能率が上がり、その結果、会社経営に貢献できるということです。もちろん間違っていません。作業改善をすれば作業が楽になり、品質が上がります。
しかし、その作業が本当に会社に利益をもたらす仕事になっているかをよく考えてみることも大切です。よく考えるとその作業そのものが不要であったり、別の問題の結果として発生した作業であったりすることがあるからです。
例えば、段取り替えがスムーズに行われていても、それが計画以外の突発の変更によるものであれば別の問題がありますね。あるいは仮組み立てや調整といえば聞こえはいいですが、一発で良品を作ることができないという技術の低さのあらわれであるということはないでしょうか。もちろん作業を改善することは良いことなのですが、そこにだけ目が行ってしまい、全体を見ることができなくなってしまうと困るのです。
例えば、ボールペンや電卓を使って転記作業をしている場合を考えてみましょう。その転記の方法をより良くするために、持ち替えが少なくなるようにペン立てを作ったり、使いやすい電卓を探してくるというのは作業改善です。しかしやはりここでは、この古めかしい仕事のやり方そのものを変える必要があると思います。コンピュータの仕組みを調べて、転記なしに一発で仕事が終わるようにするのが正しい改善です。転記作業を改善するのではなく、転記作業をなくす改善です。
木を見て森を見ず」という言葉がありますが、「作業を見て仕事を見ず」にならないようにしていただきたいと思います。
■著者プロフィール
【略歴】柿内幸夫 1951年東京生まれ。(株)柿内幸夫技術士事務所 所長としてモノづくりの改善を通じて、世界中で実践している。日本経団連の研修講師も務める。経済産業省先進技術マイスター(平成29年度)、柿内幸夫技術士事務所所長 改善コンサルタント、工学博士 技術士(経営工学)、多摩大学ビジネススクール客員教授、慶應義塾大学大学院ビジネススクール(KBS)特別招聘教授(2011~2016)、静岡大学客員教授。著書「カイゼン4.0-スタンフォード発 企業にイノベーションを起こす」、「儲かるメーカー 改善の急所〈101項〉」、「ちょこっと改善が企業を変える:大きな変革を実現する42のヒント」など。
一般社団法人日本カイゼンプロジェクト
改善の実行を通じて日本をさらに良くすることを目指し、2019年6月に設立。企業間ビジネスのマッチングから問題・課題へのソリューションの提供、新たな技術や素材への情報提供、それらの基礎となる企業間のワイワイガヤガヤなど勉強会、セミナー・ワークショップ、工場見学会、公開カイゼン指導会などを行っている。
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https://www.kaizenproject.jp/