早いもので2021年もあと十数日で終わる。ちょうど1年前は新型コロナウイルスの感染爆発の第3波にあたる時期で、収束する気配がまったく見えず、帰省も諦めて暗たんたる気持ちで年末年始を過ごしたことを覚えている。また毎年、この時期に行っているオートメーション新聞のFA各社トップインタビューも、この時は初めてオンライン形式で行ったが、各社ともに業績が厳しく、口が重かった記憶がある。
それに比べて今年は、奇跡的に感染者も抑えられ、FA業界の業績も良く、明るく年越しができそうだと言いたいところだが、FA業界はいま大問題が起きている。「納期問題」だ。PLC、リレー、インバータ、サーボモータ、コネクタなど制御機器全般で今は製品不足が起こり、入手できない状況が続いている。
FA各社も全力で対応中だが、そもそも半導体不足やケーブル、樹脂等の部材不足で作ることができないとお手上げ状態だ。よくテレビや新聞等のニュースで「半導体不足が原因で自動車が作れない」と騒いでいるが、作れないのは自動車だけではない。半導体を使っているもの全般が作れない。制御機器もそうだ。ほぼ在庫はなく、入手できるのは6カ月、1年先なんて回答もザラだ。「時期未定」という回答もある。
半導体不足の解消に向けて半導体製造装置が必要であっても、半導体製造装置メーカーはPLCやサーボモータがないから装置を作れない。PLCやサーボモータは半導体がないから作れない。完全に手詰まりだ。これは半導体製造装置に限らず、FA・自動化設備すべてが同じ状況にある。
しかも悪いことに、機械メーカーと制御盤・機器メーカー、商社・販売代理店の発注者と受注者の間で、部材調達の難易度に対する情報が錯綜し、認識に差が生まれ、お互いをすり減らす状況になっている。誰も得をしない、完全な負のサイクルに陥っている 。
この負の連鎖をどうするか? 長く業界に身を置く人でも「こんな状況は初めてだ」というくらいだから、一朝一夕で簡単に解決できるものではない。早くても22年中、23年にずれ込む可能性を示唆する意見が多い。高速道路の渋滞ではないが、「ないものはない」と腹をくくり、時間が解決してくれるのを待つしかない。
とは言え、この状況でもできることはある。再発を防止することだ。在庫を多めに持つ。調達ルートを複数持つ。標準化を行って部品点数を減らす。仕様変更の規制を緩めてコンパチ品の利用を容易にする。失敗から学ぶ。逆境こそ腕の見せ所だ。
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