昨年末に60社あまりのFA・制御機器メーカーの代表や事業責任者とインタビューを重ね、2つほど新しい動きの種を発見した。
1つ目は「脱炭素」への取り組み。2050年までにカーボンニュートラルを目指すという国の動きと連動し、製造業を含む社会全体が脱炭素を重視する経営に舵を切った。それに合わせてFA・制御機器メーカー各社も、自社が脱炭素に対して取り組むと同時に、顧客に提供する製品・サービスやソリューションに脱炭素やカーボンニュートラルへの貢献、効果などを入れてきている。
そして2つ目が「健康経営」。これまでほとんど話題に上がらなかったが、今年は健康経営優良法人を取得した、これから目指すという話題が数社から出てきた 。
健康経営とは「従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」とされており、国が企業に対して求めている。企業が社員の健康を守り、人を大事にする経営を行うことで、企業は活力を得て生産性が上がり、業績や株価アップにつながるというのが狙いだ。
2016年度に経済産業省が健康経営を行っている法人を認定する「健康経営優良法人認定制度」がはじまり、21年度では大規模法人部門では1788法人が、中小規模法人部門は7928法人が認定されている。例えばFA・制御機器メーカーでは、大企業部門でアズビル、三菱電機、横河電機、オムロン、オプテックス・エフエー、中小企業法人部門では端子台メーカーのフジコンなどが健康経営優良法人として認定されている。認定済みの企業によると、人手不足で人材の獲得競争が激しくなるなか、健康経営優良法人は働きやすい会社の代名詞として使え採用に有利になりやすく、学生や求職者も気にするポイントになっているそうだ 。
社員の健康を守り、長く安定して気持ちよく働いてもらうことが、ひいては企業の利益につながっていく。極めて当たり前のことだが、利益を上げ続けることを求められる企業としては、なるべくコストを抑えて効率化するために、図らずも社員に不健康な働き方を強いてしまっていることが多いのも現実。こうした制度で不健康経営を牽制し、労働環境を整備して社員満足を高め、人手不足を解消し、生産性を上げていこうというのは賛成だ。
自動化は人を単純作業や過酷な業務から解放し、生産性を高め、健康経営の実現につながる。健康経営の普及に向け、製造業に対して「自動化推進優良法人制度」などがあればFA・自動化業界はもっと盛り上がる。自動化先進国、ロボット大国、FA強国を目指すなら良いアイデアではないだろうか。