【産業用ロボットを巡る 光と影(38)】先端技術を交換し合う企業たちPart3!展示会/商社/ネット/SIerを信頼することが失敗の原因 ほとんどの企業はロボットの能力を全く生かせていない!

コロナ禍での情報交換会

当社が主催で行う産業用ロボットの情報交換会は、コロナの影響でしばらく行っていなかったが、複数の企業から強い要望があったため、先日、愛知県のレーザックス本社工場にて(人数制限などのコロナ対策の中)行った。今回の参加者は、ほとんどがティーチングソフトRobotWorksのユーザで、ロボットを10年以上使っている熟練者からロボット初心者までさまざまであった。今回もたいへん好評であったのでその内容を記載するが、各企業の重要なノウハウはこの記事で記載できないため、大ざっぱな言い回しになることは勘弁していただきたい。

現場の情報が大事

さて本題に入るが、今回の情報交換会の内容は①レーザックス様の会社案内②工場見学③参加企業の情報交換という構成である。

①レーザックス様に関しては、以前の記事で記載したので割愛させていただくが、「工場の担当者からでないと聞けない、リアリティーのある話」に多くの参加者が感嘆していた。

②工場見学では、ロボットとポジショナーを同期(同時に動かすこと)させながらレーザ切断というレベルの高い加工が行われた(設備全体はロボット6軸+ポジショナー2軸+走行1軸)。さらに、レーザのヘッドといえば海外製が一般的であるが、国産(レーザックス製)でありCCDカメラがヘッドに内蔵されていることなど、どうすればロボットを使用しやすくなるか工夫されている点に多くの参加者の興味をひいた。また切断された製品を手に取った参加者は「想像以上に奇麗に切断されている」と驚いていた。ちなみに、ロボットとポジショナーを同期させるティーチングは一般的に非常に困難であるが、RobotWorksを使用して大幅な工数削減に成功している旨の説明があった。

さらに、ロボット以外の加工機でレーザ加工する設備や、電子ビームの設備、またその周りで仕事をする従業員の仕事ぶりまで見たことは、他の工場を見る機会のない参加者にとってかなり新鮮であった。

現場での質疑応答で、各企業のノウハウがレベルアップ

日本のSIerの技術は世界最低レベル

工場見学の後、会議室に戻って③情報交換会が行われた。何社かは自社の動画を参加者に見せて、お互いに意見を交換するなど、充実した情報交換となった。

注目された例を挙げると、A社とB社は両社とも顧客は建築関係、ロボットで切断する対象製品も似ている、切断方法(プラズマ切断)も同じである。そうなるとロボットシステムも似るのが当然と思われるが、A社は走行軸でロボットを移動させながら切断をするのに対し、B社は固定された7台のロボットを横並びにし切断と運搬を行う仕様だった。A社の方はロボットプログラムが一つで済むのでプログラムの作成では簡単だが、全ての切断を1台のロボットで行うのでサイクルタイムがかかるし、製品の入れ替えを人が行うという、無駄の多いロボットシステムだ。B社の方は、サイクルタイムが短く、運搬もロボットが行うので、非常に優れたロボットシステムであるが、7台のロボットを同期させて行うという非常に難しいプログラムを作成する必要がある。B社はそれをExcelのマクロを駆使して簡単に作成する技術を披露して、参加者を驚かせた。

このB社のロボットシステムはSIerが行ったと思われるが、B社は自社で開発した。もちろん、ソフト(プログラム)面だけでなくハードの面でもソフトが生かせるように7台のロボットを設計している。筆者から見ても見事なロボットシステムだ。対照的にA社は日本で有数のSIerに一任したのに、このようなロボットシステムなのだから日本のSIerの技術力の低さに愕然とする。

リアルタイムでズレを補正

さらにB社は、ロボットの先端にセンサーを付けて、製品がロボットの前に置かれる度に生じるズレをリアルタイムで補正しながら切断する技術も披露した。ただ、このセンサーで探知して補正する方法には弱点があり、レーザや超音波センサーだと正しい補正値より(太陽光や熱の影響で)2、3ミリメートルもしくはそれ以上の補正値と判断され、間違った切断を行うリスクがある。そのためB社は、小型のカメラをロボットの先端に付けて上記と同様のことができる企業を探しているが、なかなか見つからない悩みも述べた。そこで、筆者の知り合いで、マッチする企業を紹介するという場面もあった。
ノウハウを高め合う大事さ

その他にもいろいろな話で盛り上がったが、どの企業も「インターネットでは、どんなに調べても載っていないロボットの具体的な活用法を聞けて、アウトプットよりもインプットの方が圧倒的に多かった」「会社に戻ったら、インプットしたことを自社で生かしたい」「ぜひ、また呼んでほしい」と興奮して帰途についた。

その皆さまの姿を見て筆者は「互いのノウハウを高め合うことの大事さ」を実感した。恐らくこの記事の読者のほとんどは、ロボットの能力を全く生かせていないはずである。興味がある方は遠慮なく当社に連絡をいただきたい。

◆山下夏樹(やましたなつき)

富士ロボット株式会社(http://www.fuji-robot.com/)代表取締役。

福井県のロボット導入促進や生産効率化を図る「ふくいロボットテクニカルセンター」顧問。1973年生まれ。サーボモータ6つを使って1からロボットを作成した経歴を持つ。多くの企業にて、自社のソフトで産業用ロボットのティーチング工数を1/10にするなどの生産効率UPや、コンサルタントでも現場の問題を解決してきた実績を持つ、産業用ロボットの導入のプロ。コンサルタントは「無償相談から」の窓口を設けている。

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