管理専門の人がいるということは、現場が上手く回っていないことの現れである。
管理部門、管理スタッフの仕事は何でしょうか?「管理すること」ではないですよ。答えは全く逆なのです。すなわち、ベストの生産ができるように、ヒトとモノと設備の動きを見て、調整、改善して管理自体を可能な限りゼロにすることです。管理そのものには付加価値がありませんから。
以前、自動車部品製造のE社の鍛造ラインで改善会を開いていた時のことです。生産計画担当の人たちだけは夜遅くまで残って翌日の生産計画を作っていました。段取り替えや工程決定などがとても複雑で難しかったのです。
しかし実際に現場での生産を見ると必ずしも計画通りではありませんでした。理由を聞くと、機械が壊れたり、人が休んだりするとその通りにはできなくなるとのことでした。しかし私は現場の人たちは生産管理が作った計画よりもっといい作り方を知っていて、そのやり方で作っているのだと思いました。そこでリーダーに尋ねると、実はそうだとこっそり教えてくれました。
複雑な現場の仕事のやり方をスタッフ部門の人たちがすべて把握しているはずがないにもかかわらず、筋が通った結果を出さなければならないということで毎晩夜遅くまで働いていたのですが、実は使われておらず意味がなかったのです。
そこで生産計画部門には、生産品目と生産数と出荷時間を生産現場に指示し、材料をすべて用意するという役割のみを担ってもらい、生産現場が自分たちにとってやり易い生産順番を決めて実行するということに変更してもらいました。
その結果は、生産管理の人は管理を定時のずっと前にその仕事を終了し、空いた時間をそれまで後回しにしていたシステムの改良に向けられるようになり、その上、みんなと一緒の時間に帰れるようになりました。生産現場は実際にはこれまで通りということでもありますので全く問題は出ませんでした。
そもそも実際の生産は変化の連続です。生産管理のスタッフが作った計画より、現場が独自の工夫で生産をやり繰りした方が現実的です。品質管理も、管理スタッフが不良集計をいくらしても品質は決して良くなりません。現場でナゼ不良が起きるのかを見つけ出して、良いモノができるように、改良改善するしかありません。
数字を見る管理スタッフは不要です。現場を見て改善することが仕事なのです。
■著者プロフィール
【略歴】柿内幸夫 1951年東京生まれ。(株)柿内幸夫技術士事務所 所長としてモノづくりの改善を通じて、世界中で実践している。日本経団連の研修講師も務める。経済産業省先進技術マイスター(平成29年度)、柿内幸夫技術士事務所所長 改善コンサルタント、工学博士 技術士(経営工学)、多摩大学ビジネススクール客員教授、慶應義塾大学大学院ビジネススクール(KBS)特別招聘教授(2011~2016)、静岡大学客員教授。著書「カイゼン4.0-スタンフォード発 企業にイノベーションを起こす」、「儲かるメーカー 改善の急所〈101項〉」、「ちょこっと改善が企業を変える:大きな変革を実現する42のヒント」など。
一般社団法人日本カイゼンプロジェクト
改善の実行を通じて日本をさらに良くすることを目指し、2019年6月に設立。企業間ビジネスのマッチングから問題・課題へのソリューションの提供、新たな技術や素材への情報提供、それらの基礎となる企業間のワイワイガヤガヤなど勉強会、セミナー・ワークショップ、工場見学会、公開カイゼン指導会などを行っている。
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https://www.kaizenproject.jp/