注文がないところに生産はない。
多くの工場では日々たくさんの製品が造られていますが、増産することより難しいのが、生産量が減った時の対応です。
対応で最もやってはならないことは、「手が空いてしまってはならない!」と考えて、造る必要がないモノを造ってしまうことです。もし売れないモノを造ってしまうと、お金がモノに化けて不良在庫化するだけでなく、管理工数と廃棄費用のダブルパンチを食らうことになってしまいます。そんなことをすればキャッシュがあっという間になくなってしまうことでしょう。生産現場にはこのような考え方は多くあります。手を空けては行けない…というのは理解できるの気持ちですが、間違いです。計算上の能率が上がっても、結果として会社に大ダメージを与えることになります。
だからと言って、生産量が少ないにもかかわらず、手が空かないようにしようと生産スピードを落としてゆっくりと造ることももちろん禁物です。一度落としたスピードは元に戻らず、景気が回復した時に競争力がなくなってしまったことに気付くことになります。
注文がないところには生産はないと考えるべきです。だから生産量を減らすということは注文が減ったということです。ですから、そういう時にするべきことは、手の空いた人で注文を取りに行くことと、次に注文があった時に、今より良いモノを安く造れるように訓練をすることです。そう考えると、段取り替えの練習や、多能工化の訓練、あるいは設備の改善などするべきことは山ほどあるはずです。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で売り上げを落としておられる企業は多いです。どうぞ皆さまで力を合わせてこの時期でしかできない将来に対する準備となる対応をお取りください。応援しております!
■著者プロフィール
【略歴】柿内幸夫 1951年東京生まれ。(株)柿内幸夫技術士事務所 所長としてモノづくりの改善を通じて、世界中で実践している。日本経団連の研修講師も務める。経済産業省先進技術マイスター(平成29年度)、柿内幸夫技術士事務所所長 改善コンサルタント、工学博士 技術士(経営工学)、多摩大学ビジネススクール客員教授、慶應義塾大学大学院ビジネススクール(KBS)特別招聘教授(2011~2016)、静岡大学客員教授。著書「カイゼン4.0-スタンフォード発 企業にイノベーションを起こす」、「儲かるメーカー 改善の急所〈101項〉」、「ちょこっと改善が企業を変える:大きな変革を実現する42のヒント」など。
一般社団法人日本カイゼンプロジェクト
改善の実行を通じて日本をさらに良くすることを目指し、2019年6月に設立。企業間ビジネスのマッチングから問題・課題へのソリューションの提供、新たな技術や素材への情報提供、それらの基礎となる企業間のワイワイガヤガヤなど勉強会、セミナー・ワークショップ、工場見学会、公開カイゼン指導会などを行っている。
■詳細・入会はこちら
https://www.kaizenproject.jp/